三途の河原の釣りポイント いまだ未確認・・・・・・フグ中毒 最近あった死にぞこないの話
「意識不明の重態らしい」
「うん・・?」 突然のことで事態が飲み込めない。かの御仁が釣りに行くので車を貸してほしいと頼み込んできたのは事件の起こるつい2日前だった、二人連れで釣りに行き、車も返って来た、腕に見合わぬ釣果で喜んでおったのに、この変わりよう。あまりの落差に溝が埋まらない。
心臓マッサージとAEDで心臓は動き出したが意識がないらしい。
救 急 車 「どこに運ぼうか」
心臓外科医 「異常有りません」 他に原因は? 「?」
脳 外科医 「異常有りません」 他に原因は? 「?」
内 科 医 「異常有りません」 他に原因は? 「?」
保 健 所 「なに食べられました?」 おにぎりと・・お茶・・・
警 察 「事件性ありません」
と、ひととうり表向きのことが終わった頃、件の釣りの同行者
「フグじゃ!」
釣ったフグを持ち帰り自分で調理して「肝」を食べたらしい。それも御念のいったことに他の魚もそこそこあったので他人にお振る舞い。「魚を調理して一杯飲もう」そこにやってきたのが目の不自由な人。「フグは肝がうまいんで」と悪魔の誘い。
どれどれ・・・コロリ。 同じ肝を食べた目の不自由な人ーなんともない 無事。
ーああ無情ー
そこにやってきたのが保健所の人「どのフグ食べられましたかねえ・・?」「この図鑑に載ってるフグ、どれでした?」
10日ばかりの入院で無事生還、これで一件落着
とはいかない、話はこれからだー
我々釣り師の仲間内では釣りに関わってどじを踏んだやつを 「獲物」と呼びます。釣り師はただ魚を釣るだけではないのです。こんなおいしい獲物、めったなことでは逃しません。美味しいネタは時間をかけてたっぷりと味わいます。
「フグはな、釣って30秒以内なら毒はないんじゃ、釣ってすぐ丸呑み、のどの辺りや胃の中をフグがちょこちょこ噛み付きよる、これがたまらん、通の食い方はそうするんじゃ、今度試してみな」
「・・・・」
「あんた、釣りも中途半端ならあの世に行くのも半端じゃなあ」
「・・・・」
「ええか、なんで半端と言われるか?ああ? それはな、釣り師たる者、三途の川に付いたらまずなにをせにゃならん?」
「・・・・」
「これじゃから素人はだめなんだ。ええかまず三途の川のどの辺に魚がいるか、根周りはどうか、水温、天候、風、入漁料、渡船、見張り、などなどちゃんと調べてこんかい、釣り師はな、三途の川を渡ってあの世にゃ行かんのじゃ。手付かずの釣り場があるのに素どうりかい、もったいないねえ、入れ食い間違いないのにねえ」
「・・・・」
「もう一回行って調べて来い!」
後日
「よう生還したなあ、じゃがな、これまでと同じなら釣りの腕はあがらんわ、またどじをするわで困ったことだ、修行してひと周りもふた周りも大きな人間になれ」
「はい」
「おお、丁度ここに(えびたつべ)と(もんどり)がある、これを沈めて釣りえさのシラサを採って来い、暑い中、額に汗すればよい修行になる、釣りにも使えて一石二鳥じゃ」
「はい」
「行ってきました」
「おおご苦労、おや、人間がひと周り大きくなったな」「ところで一升でも採れたか?」
「・・・・・・・・これは、 たった7匹・・・・」
「修行が足りんな、こりゃ駄目だ、あんたにゃ別のええもん教えてやる。どうじゃ、 (山菜)と(きのこ) どちらもフグに勝る、 う つ く し い
世界があるぞ」
「・・・・」
ああ いい事をした後は気持ちがいいなあ。 せいぜい獲物は大事にしなければ。
「これ実際言っちゃった、私は悪い人でしょうか?」
おのおの方養生めされい