7イレブンと釣り!
セブンイレブンのおばちゃんは料理が上手だ。
ご主人と店に立つこともあるが、余程人のつなぎがうまくない時以外は2坪ばかりの畑で精を出している。店は若夫婦が切り盛りしているが、まだまだどうして肝心なところの仕切りはおばちゃんだ。
おばちゃんの畑はそれは見事なもので、畝の両端はぴたりとそろって並んでいるし、山の頂などは角が立ったようになっている。雑草などはここに生息するとなるとよほど覚悟のいることだ。
なにもそこまでと傍目には思うのだが、そこは性分らしい。おばちゃんは、こうすると出来た大根が形や大きさが揃うのよと言うが、どうもその様には見えない、各様に育っている。舐めるように可愛がっている畑の作物に虫が付いたときなど、「あらあらここはだめよ」と話しかけながら、そっとどかしている。 おばちゃん又舞い戻ってくるのにと思うのだが、それも性分だ。
釣りの食料などを調達するのに立ち寄り始めてから、駆け出しの釣り人である息子さんと色々話すようになって、それは駆け出しですから釣れる訳はありません。
余分の魚をおすそ分けするようになった。こちらにとっては大したものではないと思っているのだがあちら様にとっては神様の仕業に見えたらしい。大層な喜びようだ。
おばちゃんの料理はここからだ。畑を作るように丹精します、それはそれは見事なもので普段は逃がす このしろ など、骨がましいこの魚がこんなにうまいものかと、それは驚いた。このしろの調理法を聞いて釣り場で披露すると、今では捨てる人など無いことになってしまった。げに現金なのは釣り師だ。
いけませぬ、お題に入ります。 セブンイレブンで釣りなど出来はしません。そんな事をすると、おまわりさんとお話をすることになってしまいます。
セブンイレブンでは時折、700円ばかりの買い物でくじを引かせるイベントがあります。
浪士様も果敢に挑戦なさいます。いえいえ下々の方がなさるように、くじの入った箱に手を突っ込むなど、はしたないことはなさいません。
箱の横に積み上げたくじを厳粛なおももちで「では!」とお引きに成ります。
あら不思議、全部当たりくじではないか。
「おめでとう御座います!」 「百発百中ですね、さすが浪士様」
「いやなに これぐらいなことは・・・」と浪士様は平然となさっておいでです。
当たりくじで商品をもらうのだが、全部が全部ほしいものばかりとは限らない。
「まだまだ未熟でほしいものばかりとはなかなか・・・・」
「そうですか浪士様でもねえ」
そうこういたしておりますと次からはカウンターの上にくじが広げられているではないか。 それも商品の印刷がしてあるほうを上に向けて。
あら不思議! 全部当たりくじ!それも入用な商品ばかり。
「おめでとう御座います!」 「百発百中ですね、さすが浪士様」
「何、これぐらいのことが出来て初めて魚は釣れるんですよ」
「余分にもう一枚引いてもいいか?」
「それは駄目です」 ここはしっかりしているのである。
ここしばらくおばちゃんの顔が見えないと思ったら、どうやらご主人が入院したらしい。 おばちゃんのことだ、畑を作るように甲斐甲斐しく看病するに違いない。ご主人じきに良くなるだろう。
運がいい人生でもなかった。宝くじの番号などほとんど犯罪に近いくらいかけ離れている。
今度余った魚は 宝くじのおばちゃん行きだな!