釣りをする人、すくう人、その又道具を作る人
釣りと申しましても様々ありまして、そこらへんの溝にちょいと仕掛けを入れて手長のえびを釣るものから、大層な船仕立てでマグロを狙うものまで多種多様で御座います。
花も多種多様で・・・色も多種多様で・・・
それに伴う道具もこれでもかというぐらいおびただしい数の道具が御座います。
とかく日本人と言いますものは凝りに凝りあげて、何もそこまでやるこたあ無かろうと言うぐらいのところまで、精緻に細かく道具のことなどを作ってまいります。
播州赤穂、ここは有名な「赤穂浪士」の産地ですが、他に算盤の有力な産地でもあります。皆さんがご存じないところですと「釣り針」と言うのもありまして、古くからの有力な産地になっています。
さてこの釣り針、魚に合わせた形状のものに、その大きさに合わせたものを組み合わせていますから、針の種類だけで何千もの数になってきます。 昔はこれに和名がそれぞれあったと言いますから、作り手や釣り師も使い分けるのには随分と手間隙が掛かったに違いありません。
この国では風、雨にしても細かい表情にそれぞれ名前を付けて、相手に伝えます。たとえば、「五月雨」これを聞くと大体雨の降りようのかなりの部分が伝わります。色々な状況を伝えるのにそれぞれ名前があると言うことは実に効率よく伝わるものです。 ただし名前と状況を把握していないと、台風と春雨を間違って使うと成るとよほど危険なことです。
このあたりの話を海外修行のある、フランス料理の調理師と話しておりますと・・
「針の種類は知らんが、風はおおむね 弱 普通 強 暴風ぐらいしかないと思う、あまり気にしないで数も知れている」と言います。
「しかし日本よりも精緻で細かいことにこだわるものもある。魚の焼き加減でも何十種類もある。」 調理の加減に関する表現は日本よりも細かいと言う。
その上・・
「女を口説く口説き文句はそこまであるかと言うぐらい有る」らしいのだ。
話し込むうちどうやらこちらでは、家の外に関して表現が豊かなのだが、家の中のことなどフランスには及ばない。家の内外が逆だろうという結論に落ち着いた。
ことの白黒は定かで無いが、面白いと思うことだ。