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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

二人なら大丈夫!

 

 釣り師と申します人種は釣りのためなら見境なく行動してまいります。これ、と思いましたらさかりの付いた猫、まっしぐらに突き進み、後ろなど振り返るものですか。

 

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 釣り場と申しますものは多種多様で、断崖絶壁から、海の孤島、人の立ち入らぬ秘境まで、魚のあるところ釣り師の探索の手から逃れられるものではありません。源氏が平家を追い詰めるように徹底的に迫ります。

 

 自然の中にある釣り場は、様様な顔で御座いましてちびっ子釣り師が安全に釣れる場所から、獣しか入れぬような、良くもまあこれ程までして釣らなくてもよさそうな釣り場まで御座いまして、ハエ獲り紙にへばりついたハエのように取り付いて釣っております。

 井坂さんと言う人がありまして、この人もへばり付きに出かけたのは良いのですがやってくれました。島に渡り磯のメバルを夜釣りと洒落込んだ。魚が釣りたいのですから釣れる場所をと考えた挙句、山越えを企てた。

 

 船着場は人が入ります、当然釣り師も入りますから、誰もいない島の反対側の磯を狙ったのだ。薄暗い山道を一人行き山も越えた、急な絶壁はロープを伝って降りていきます。どうも以前から目をつけていた場所らしく、うまく行けば自分だけの秘密のポイントにしたかったらしい。出し抜き・抜け駆けは釣り師の技のひとつですから、この技繰り出してほくそえむ、算段は上出来のはずです。

 

 砂場から少し沖の歩いていける岩場、これが抜け駆け大漁釣り場、早速に釣り始めてまいります。そこそこの釣果だったそうな。人が入っていないところなら、潮さえ良ければそうだ。

 

 井坂さん目論見は良かったのだが、ひとつ忘れていた。海は干満の差がある、瀬戸内ならなおさらなのだ。 釣りあおったのは良いが気が付くと足元は海水に取り囲まれている、岸になんか潮が引くまで帰られません。飯でもと思うが貴重品と一緒に岸だ。

 

 不幸は連鎖するもので、大きな波が来て道具一式の上、自分まで波にさらわれた。

懐中電灯も水につかり、暗闇の中を岸を目指すのだがこれが潮の流れでうまく行かない。

 メバルという魚このごろから釣れ始めます。そう大体寒い時期の釣りなのです。

 

 朝方電話の呼び出し音で目覚めると「・。、。・。、。・¥」なにやらぼそぼそつぶやく声がしたのが、井坂さんからの「助けてくれ・・」だった。

 

 長い間水に浸かっていたがようやくの事に岸にたどり着いて、電話して来たのだった。

 

 警察は走り回るは、漁協の船は走り回るは、家族はうろたえるは・・・

半日たって救出されたのだが、それは無残な姿でありました。身体は擦り傷だらけ顔色は青白く、平家の落人はかく成る姿であっただろうという格好だ。

 

 それはひとつ間違えたら命に関わる事なので、一生分絞られた事だ。

一月ばかり経った頃、井坂さんが訪れる。車のドアを開けるとなにやら取り出す風。

 

 新品の釣り道具を見せびらかしながら、「今度は二人で行くから大丈夫」

 

何が大丈夫なものか!と思ったのですが、釣り師だからしょうがないか、とも思うことだった。