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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

旅する釣り師

 

 

 

 釣り師とて旅の一つや二つするもので御座いまして、釣りばかりに呆けているわけではありません。釣りで遠出の旅なども有りますが、純然たる旅も人並みにこなして参りますから、普通の人より一寸異形であるだけで、後はいたって普通で御座います。

 

 

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 とは言いましてもそこは釣り師で御座いますから、旅先の釣具屋さんが気に成って参ります。最近では何処の街に行きましても、郊外型の大型店が多う御座いまして、昔ながらの親父さん一人で切り盛りする店など少なくなってまいりました。

 

 旅はその土地の風情を楽しむのも一つですが、このごろでは何処の街も同じ全国チェーンの建物で覆われ、町並みの風情というのも均質化してまいります。民家の家並みも、その土地が持つ自然環境から来る土地柄というものが無くなって、安手のバラック仕立て、無国籍の建物に侵食されております。

 

 

 旅先の釣具屋さん、どうしても足がつい向いてまいりますが、大型店よりも小さい釣具屋さんに足が向きがちになります。

大型店は品揃えもよろしいし、欲しいものがすぐ手に入る便利さがありますが、その地方独自の釣りに対応する品々は、圧倒的に小さな釣具屋さんの持分です。

 

 同じ魚を釣るにしても、地方で釣り方や道具が違ってきますから、それを知る陸の釣りもそれは面白いものです。店の片隅には、知らない世界が置いてあるのが面白い。

 

 小さい店というのは、それは品揃えはさびしいものですが、特殊物は思わぬものが奥に隠されていたり、大概が本人の釣り好きが高じてその道に入った人が多く、一家言ある人が多いものです。

 

 釣りを始めた頃は小さいお店の時代であったので、この一家言がかなり厄介なものでありました。店の主人は客の腕と知識をしっかり値踏みしますし、うっかり生半可な事でも言いますと、すっかりやり込められて、物など売ってはもらえません。

しっかり店も客を選びますし、客も店を選んでおりました。

このような店ではこちらも試されますから、それなりの下準備、理論武装の上、人間関係の下地を作って本題です。真に煩わしい事なのですが、この壁を乗り越えますと便秘のお通じ、痒い所に手が届いてまいります。

 

 自分に合った新製品など、頼まぬのに取り置きがしてあったり、それはある意味無駄の無い非常に効率の良い道具選びのことだった。

  

 このような店にはもう一つ関門があって、それは常連客という店主のお眼鏡にかなった胡坐かきのことだ。もう濃密な人間関係など出来ているので、店主代行のご家老衆とも言うべき人で、これが腕や知識の事を探ってまいります。道具をそろえるのに、居心地が悪い恐怖感を味わう事だ。

 

 

 これと同じ経験をした所が御座いまして、それはジャズ喫茶でも同じような扱いでありましたから、当時はいたるところで、サービスも物の受渡しも知識と技のせめぎ合いである事です。扉を開けて中にはいる、いっせいに誰がどれだけの知識と技量で来たかと品定め、よそ者を見る冷たい視線がもう一枚の扉を作ります。

 

 釣具屋さんもジャズ喫茶も、中にはいれば住み心地はいいのですが今度は村に縛られます。

 

 

 郊外型の釣具店は何処も明るくだれでも気軽に覗けるので、過度の煩わしい人間関係を嫌う若い人などには、うってつけの店かもしれません。しかし自分の責任で道具など選ばねばなりませんし、それが一番適したものかどうかは、試さねば分かりません。 随分回り道で非効率のようにも思えるのですが。

 

 それにしても小さな釣具店はかけらも無くなった。