釣り師の言い分 250円で生き返るセールスマンも有る!
釣りを教えてくれといいます。
なんでまたそんな気に成ったか?と聞きますと、どうやら浪士様のブログを読んでいるらしく
「毎度いろんなことが起こって、退屈しませんよね。楽しそうでいいじゃあないですか」
と、目も眩むような事をほざきます。
馬鹿野朗! 浪士様が書かれる事は何十年も釣り狂うさなかにおきた、行きがけの
駄賃のような出来事だ。浪士様が釣りに行くたび、ブログに書いたような事件に巻き
込まれていたんじゃあ、身が持たねえ。其れに釣りなんか出来やしねえじゃないか。
お前さん大きく勘違いしてる。魚釣りたぁ魚を釣る事で、ブログに書かれたような事件をなぞるのが釣りなもんか! あんたよっぽと親の躾が悪いか、世間知らず、その上ようやく三流大学に加えてもらえるような、程度のよろしいところに収容されてたんじゃあないのかい。
まったくこれだから堅気の衆には困ってまいります。おやおやあんたも流行の「こする」電話をお持ちですな。そんな物ぁ暇つぶしの手慰み程度のもんで、いくらこすったところで器の一つや二つ、大きくなるものではありません。
こんな奴は大抵世の中を舐め切っておりまして、簡単にこするだけで渡れるものと思っておりますから、人間の目方は軽いのです。
車のセールスをしているこの青年、軽く・・ 「やっぱり一回連れて行ってくださいよ」と言います。 あたら何も知らない素人風情を修羅の深みに引きずり込むなんざあ、あまり夢見のいいものでは御座いません。 青年は車を売る執念で頼み込むのですから、扱いには骨の折れることです。
満面笑みで早朝に現れた青年は、何を夢見ているのか、体から意気込みが伝わってきます。 気の毒に・・・貴重な人生の一時を無駄にしようなんざぁ、ご先祖様に申し開き出来まいに。
あまりに頼み込むので、しぶしぶ承知した事ですが、「いいか、舟板一枚、底は地獄だ。それに足を突っ込もうとしていなさる、今んとこは太てえ了見だ。とりあえずひととうり教えるから、後は勝手に生き延びてくれ。 分からん事はその都度聞け」
と言い放って放置してやりました。
まあ、御覧なさい。 あっという間ですよ、人生の厳しさを知るのは。
朝あれほど生気あふれていた青年は、これがあの男かと言うぐらい消耗しやつれております。 ナメクジに塩をかけた時のように、釣り場では見る間に消耗した青年は、イチゴ味のかき氷をむさぼっております。 250円です。
どうだなかなか厳しいもんだろう?といいますと「・・はあ・・」と心底思い知っております。
この暑さでやつれようがひどかったので、浪士様が釣った魚を全部持ち帰らせたのですが・・・
イチゴの色が付いた舌を回転させながら、250円で生き返ったセールスマンは
「今日はこれだけ釣った。今度は季節がよくなってから行こう」
と体面を保っているのは間違いない事なのです