備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

ミニバイクの釣り師  こかぁだめじゃ釣れん!

 

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 旗手さんは島の出身の人で、永く陸で長距離トラックの運転手をした人だ。

彼の釣りは特異な感覚を駆使して釣るのがスタイルで、釣る技術に加えて、感覚を使って釣るのですから、その腕は衆目の一致する事だ。

 

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 釣りを長年やっておりますと、この人はもって生まれた才が有るのではないかと、思うことが有ります。

いやいやまてまて、同じ目鼻の数で、同じ裸で生まれて、そう生まれた時から不公平は有るまい。生まれて後に装備したに違いないと思うのだが・・・・

 

 旗手さんは今は障害年金で暮らしている。長距離トラックに乗っている頃は身入りもよく、暇を見つけては釣りに精を出したことだ。

彼とは20年前ぐらいであったか、釣り場では日曜釣り師の私と違って、長距離に乗っている人では釣行日が重なる事はまれだ。それでも釣りの細かい事など、なかなか話して通じる相手も少なかったことから、顔を合わせるうち懇意な事となった。

 

 当時彼は800万何がしかの遺産相続があって、日頃つましいところであったのでこれは喜んで散財した。釣具などは最新式の最高級なもので、みな釣具を買う前には旗手さんに見せてもらってから買ったものだ。

今では古すぎてだれも相手にしないが、当時は横目でしっかり品定めされたものだ。

 

2年ばかりで使い切った散財の件が有ったからかどうかは知らないが、妻子と別れることとなって、それからは独身釣り師だ。

 

 その後彼は、運転中に血を吐いて働く事が充分出来なくなり、障害年金のお世話に成っている。

 

 独身釣り師の移動手段と釣行はそれからもっぱらミニバイクとなり、分不相応な荷物を積み込まれる事となった。

 ミニバイクは可哀想なもので、うずたかく積まれた荷物と使い古した釣具でかなり高い重心。独身釣り師が主人に成ったが不幸、50CCのエンジンは今日も過重労働を強いられます。ああこれはハリネズミが竹馬に乗っているようだ。

 

 旗手さんの釣りの腕は、並み居る猛者の一人に数えられます。しかし際立って突出しているのは、釣りの腕よりも、その見極めの手際の良さだ。

 

 私どもの釣りは 釣り座の下に撒き餌で魚を寄せて釣ります、朝から腐心してせっかく作った場を手放すなど、それはハゲの後ろ髪を引くより未練の残る事なのです。

旗手さんはそれを惜しげもなく見切って・・・

 

 「こかぁだめじゃ釣れん!」それまで丹精した釣り座を見切り、新しい釣り座を構えます。 それがこの人に限ってよく当たる、不思議と言えば不思議な事なのです。

 

 「あれよの~分かろうが・・・魚がひいとろうが~」と説明する言葉を持ち合わせないのがなんとも分かりづらいところなのだが、彼の中では整然と合理的に分かっているらしいのだ。

 

 なんとも鮮やかに釣りこなす旗手さんだが、最近釣り場で見かけなくなった。

なんでもバイクで転倒したとか、云々聞えては来るのだが・・・・まあ心配する事も有るまい、彼も釣り師だ今に蘇るに違いない。

 

         浪士様といえば未だ釣り座を見切れずにいる。

 

 

 

 

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