密かに時限爆弾を仕掛けたのだが・・・・
釣り場に着きますとどちらの釣り師も、それは無駄な動き無く準備を始めて
まいります。永年同じことを繰り返しておりますと、日頃不器用な人でも洗練
されたものになってまいりますから、繰り返す事とはげに恐ろしいもので御座います。
この動きの中に何故かぎこちない動きをする奴が?その上何か隠そうとしております。それは悟られてはならぬことですが、観察眼の塊の釣り師にとっては、科捜研の女より目ざとく見つけてまいるもので御座います。隠そうたってそう簡単に許してもらえるなど、考えるほうが間違いなのです。
この空気すぐに、伝播しまして「おい、隠したぞ、今度は何の算段だい?」
と詮索の対象になってきます。
釣り師は考えに考えた秘策を持って釣り場に参る事があります。失敗をあざけられるより、ひそかに試してうまく行けば独壇場、これほど人を出し抜いても合法的なことがありましょうか。
一人独自の技術で賞賛を浴びる、なんとすわり心地のいい椅子である事か。
これを目指してそれぞれ工夫を重ねるのですが、悟られたんじゃあしまいです。他の釣り師の監視の目からは逃れようがありません。アリの這い出る隙間などあるものですか。
ひそかに進めた隠し事も、ちらりと監視の目が突き刺さって・・
「今日は天気がいいねえ・・おや何か様子が違うが・・・」
からはいりまして
「お前さん何か隠し事が有るんじゃあ・・・」
「吐いちまいなよ、おみとうしだぜ、・・」
「陰でごそごそ・・・いけませんねえ・・」
とほじくり始めます。それでもだめなら
「やい吐け!吐いたら楽んなるぞ・・あ~ん・・お前のお父さんやお母さん
こんな子に育てた覚えは無いと泣いとるぞ。真人間になれ!」
とすっかり犯人扱い
「おいみんな!こいつなんか隠したぞ集まれ!」
と好奇心の強い釣り師は集まって、迷える子羊の一匹や二匹、丸裸にして白状させられるのです。せっかく隠しとうすつもりの秘策は、ここが無慈悲の終点です。
釣りを覚え初めの頃、さんざんにあれこれ試したのは言うまでも御座いません。恥かしことの数々、死屍累々。
私どもの釣りは撒き餌の団子に針と餌を忍ばせて沈める、底で割れた団子の中から針の付いた餌が出てきて、それを魚に食わすというものでして団子が割れなければ釣りになりません。
この団子がなかなか割れない。今では配合で調整できるのですが、当時はこれが分からない。あれこれ考えてまいりまして・・・
なにが思いつきの種になるか分かりませんから、日頃から油断なく観察しておかねばなりません。子供とラムネ菓子を口の中で転がしている時閃いた。あのジュワ^と泡の出て溶ける奴です。
割れない団子が内部の力で割れたら、事は簡単。まさか爆薬と言うわけには参りませんで、何かいいものは?の矢先ラムネ菓子で思いついた。
団子に餌とこのラムネ菓子を忍ばせる、泡が出て内部から膨らんで「ふっふっふ・・」時限爆弾ではないか・・よ~し!
これは今後馬鹿は相手に出来んな!と思わせる着想だったのです。
すっかり白状させられた上に、失敗作の実験まで覗かれて
「割れませんねえ・・どうしましょう・・どうしたんですかね」とからかいの対象のまでさせられたのだが、なに 此れ位の事でめげてはおられません。
次はあの手で行くかとは思ってみるのだが・・・・・