備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

サビの出た釣り師とアスリート

 

 

 釣りなどと言いますのは。日陰者の手慰みがせいぜいのところで御座いまして、とても日向に出してひけらかすと言う代物では御座いません。

 

 大体がこれに夢中に成るなど、決して褒められた事では御座いませんで、浮ついた歌舞伎者のそしりは免れぬところと成っております。

 

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 釣り場に集まるところ、半ば惰性のような顔ぶれでサビの出た釣り師が、何の生産性も無い与太話に興じるところとなって、今日も日がな一日いつもと変わらぬ日になるなと納得しかけたその時・・・。

 

 でた~! 現れた~!

 

 渡船にて華やかに出現した一団、これは若く 成り等 洒落ておって、どう見ても今風、さび付いた釣り師とは対極の人種だ。

 

 この一団筏に降り立ちます。筏の上はくたびれた敗残兵ときらびやかな若武者と言う取り合わせと成って、海上の一角 違和感の展示場と成って参ります。

 

 さて段取りなど付いたところで釣り始めるのですが、洒落者の一団 毛色が変わったところで、頭目らしきものを中心に作戦会議成るものを開催しております。

それは貴方、英語ですよ。その上やたら専門用語ですよ。知らぬ人が見たらメーカーの差し金で来たテスターかと見紛うばかり、一見凄腕と思わせるには役者は充分です。

 

 頃合は良し、準備万端整ったところで早速に若武者の一団釣り始めて参ります。最初から気合の入る事で、どうやら端から撒き餌を集団で効かして釣ろうなどと力技の作戦らしいところです。

 

 一方のサビ付いた釣り師のほうは、やる気が有るのか無いのかかなり弛緩したふうで、カニ籠を揚げてタコと格闘するもの、タバコをふかして悠然と構えるもの、気の早いのに成りますと弁当を使うものなど、どうして何しにやってきたのか分からぬ風と成っております。

若武者など歯牙にもかけぬところで、わざとかと言いますとそうではありません。若武者その1 若武者その2 など今まで散々この手合は現れてまいったところで、別段珍しくも無い、さして気にするまでも無いということなのです。

 

 潮目が変わる、釣り場の空気が一変するのは、時合い潮時、夫婦の大岩の片方が隠れるや否やさび付いた釣り師の顔つきが変わってまいることです。

そこまで豹変するのかと思うところで、そこはそれ絵に描いたような釣りを繰り広げる事です。

 

 日が高くなり気温が上昇して参りましても、サビの釣り師は集中しておりますが、一方の若武者は最初から飛ばしすぎた。気力が衰えた風に成っております。

お天道様に左右されるんじゃあなくて、釣り師の都合にお天道様を変えるぐらいでないとそこは釣りにはなりません。

 

 釣りと申しますもの、時合いが来ませぬと思うようなことには成りません。いらぬところに力を入れたところでろくな釣果に成りません、若武者のあてが美しく外れてまいります。

 

 釣りは場を知るということが大事な事で、にわかに知識や道具、力技など繰り出したところで、釣れないことは無いが釣れないのです。

 

 「ここはどんな餌がいいんです?どの潮周りが釣れるんです?」

 「僕らは釣りのトーナメントに出ているんで、いろんなところで釣りをするんですが、それぞれ場所が違うと釣り方も違って勉強に成ります」

 「アスリートは経験が大事ですものね」

 

 と言うのだが、競う釣りなど眼中に無いサビの釣り師にとって、皆目分からぬ世界の事であった。

中にはアスリートとアイスクリームの違いが分からないといって、煙に巻くサビの有った事だ。

 

 

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