備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

ウルトラマンや戦艦大和と対峙する釣り師

 

 

 

 暑さが厳しいと申しますのはどちら様も同じで、時節の挨拶など頭にどうしても「暑い!」と言う言葉が入ってまいります。

 

 釣場と申しますのは大概が炎天下のもとで行われるものでして、釣り師といえば海上で天から干、終いにはくすんだ釣り師の日干しということで、よほど酔狂な御仁でもなければ絶えられるものでは御座いません。

 

 

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 こちらの常時行く釣り場は海上にあり、対岸が海水浴場と成っております。

砂浜は海砂の採取でやせ細り、海水浴場の体を成す為に何処やらから砂を持ち込んで整えると言う有様、それなら最初から砂の採取などやらねば良かろうとおもうのですが、これまた諸般の諸事情とやらに振り回されるところで御座います。

 

 釣場と海水浴場を隔てる物は日頃は何も無いのですが、海水浴のシーズンとも成りますと一本はフロートのみの仕切り、もう一本はサメよけのネットがフロートから海底まで張巡らされるところです。

 

 ここの釣場を主戦場にする釣り師にとって、この季節厄介な事が2件有りまして、炎天下、暑さに耐えて頭を抱えるのです。

 

 一件は海水浴場にサメよけのネットの敷設、これは大勢寄ってたかって賑やかにやるところで、次の日は魚が恐れて釣れるものではありません。

釣場に参りましてこのネットが敷設されていますと、ため息ばかりの事となって釣り師の機嫌がそれはもう悪くなります。

「おい、船頭ネットの設置ぐらい日付ぐらいわかろうに、こんな日に筏に乗せるなんざぁ好い死に方はできんで・・」とぶつくさ申しますと「これも釣り、これを釣りこなさずして何の釣り師か、修行修行・・」とてんで相手にいたしませんで、鼻くそなぞほじるのですから煮ても焼いても食えません。

 

 残る一件、これが花火の打ち上げられた翌日、これがいけません。今まで良い目など欠片も無い事で、だったら行かいでも良かろうものなのですが、そこはそれ かすかな希望を抱いてぶつくさ言いながら、かなりの人数が出かけてまいるのですから何をかいわんやなのです。

 

 

 釣り師の頭がかなり煮詰まってまいります。やるかたない憤懣は、しょうがありません、ウルトラマン戦艦大和に向けられる事となります。

 

 海水浴にはどういう訳か、浮き輪が持ち込まれるところで善男善女が次々これにつかまってまいります。

良くしたもので遊び呆ける善男善女から神様はこの浮き輪をよく没収されます。手を離れた浮き輪は風に乗ってフェンスを越えます。

 釣り筏で待ち構える、遊び呆けず修行中の釣り師はこれを回収して参ります。

 

ウルトラマン一件漂着しました処置方指示願います」

「はい了解しました、現場にて処理対処願います」

空気を抜いたところで、海中のかに籠に証拠隠滅です。

 

戦艦大和漂着しました、只今から救助に向かいます」

「はい了解しました、現場にて処置対処願います」

またまた証拠隠滅。

 

海水浴場から小型船で監視員がフロートを持ち上げ回収に駆けつけます。そのタイムラグが致命傷に・・。

 

「すいません、ウルトラマン来ませんでしたかねえ」

「わしらは釣りばっかりで浮き輪の番はしとらんなあ、あっちに流れていったような」

 

「すいません、戦艦大和来ませんでしたかねえ」

「わしらは釣りばっかりで浮き輪の番はしとらんなあ、こっちに流れていったような」

 

監視員はあっちやこっち、その上そっちも探すのですが、なかなか遭難救助に手間取っております。

 

 「おい、船頭 孫が来たらこの浮き輪で遊ばしたれ」

足元にはおびただしい数のしぼんだ浮き輪が。

これだけの数貰った所で持て余すだろうなとは思うのだが・・。

 

 

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