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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

神様・・上納金は付けにしてくれまいか・・・

 

 

 秋たけなわとなって、あちこち催し物の多い事となって参ります。

なんといいましても祭りということで御座いまして、どちら様も浮き足立ったところで賑わって参ります。

 

 最近の祭りといいますのは、いたって健康的で参加するよりも端から眺めると言うのが多いところで御座います。

地方の零細弱小の祭りと成りますと、神輿はトラックに乗り、どこか投げやりで表面をなぞるだけと言うのが多く御座います。

祭り然としたのは有名どころだけということで御座いますが、こちらとて本来ある匂い立つ狂気などと言いますのはとっくに牙を抜かれておりまして、実に健康的でたおやかと言う事で御座います。

 

 

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「浪士さん今年も縄ぁ張っつかい・・!」

 

こういって縄の束を持ってきたのは祭りの役員さんで、今年も神様の縄張りを善男善女に再確認させようと、神様の魂胆で手下に縄を張らせて参ります。

 

 「事務所周りだけでええんじゃな・・ところでつかぬ事を聞くがここの神さんは縄内だけをしのぎになさるんかい・・・?」

 

「ここらぁ仰山神さんがおってじゃけえ、昔から範囲が決まっとって、それぞれ自分の場所に縄を張るんよの。張り間違えて昔は争いが有ったけえ間違えるわけに行かんのですわい、まあうちの神様が一番強いけえの」

 

 と、まあこう言う事らしいのだが、田舎の出所の祭りにはこう言うことが無かったので、これじゃあ今の反社会勢力と遜色の無い有り様なのですから戸惑って参ります。

神頼みはどちら様もするのですが、これでは通りすがりの者がすがってもどうやら邪険にされそうなところなのです。

えらい狭量な神様も有ることで御座います。

賽銭箱を探られたり、犬に小水をかけられてもあまり文句は言えまいにと、神様の心配をするところですが、これだけ神様も多ければ性格も違うのだろうと無理に納得をいたして参ります。

  

 祭り当日と言う事で神輿など一巡しますと次に現れるのが子供神輿とやらで、子供の一団が声を張り上げ

「子供神輿がやってまいりました、皆さんお参り下さい」

と巡回して参ります。

 

大概どの家でもおひねりを準備するところで、子供神輿にはとりわけ配慮をすることと成って参ります。

浪士様も本体の神輿は田舎の氏神様の手前やり過ごすのですが、子供神輿には義理を果たして参ります。

子供神輿も手馴れたもので、何処の家は実入りが多いなどとわきまえておりまして、小ざかしく付け込んで参ります。

 

もらえる家に近ずくと声が一層大きくなりますし、もらえぬ家の前では形ばかりの催促ということです。

 

鐘や太鼓が近づいて、さてそろそろおひねりの段取りでもするかと思ったところで、気が付きます。

 

 

「こりゃあイカン、財布を忘れて来とる!」

 

こうなりますと小石を包むわけにも参りません。残る手段は

 

 逃げるか・・・!

 そ知らぬ顔の半兵衛でやり過ごすか・・・!

 それとも訳を話して借用書でも差し入れるか・・・!

 

切羽詰ると言う事が御座います。鐘、太鼓の音は寸前まで来ております、これでは逃げるにはあまりにあからさまに過ぎます。

借用書は少しばかり悪さの心当たりが有るところで、何でもお見通しの神様にはいかにも信用が無かろう。

 

致し方御座いません、ひたすらじっとして息を凝らしてまいります。

 

 性質の悪い子供神輿も有ったもので御座いまして、いつもに増して手前どもの事務所の前で声を張り上げます。

ここは我慢のしどころと成ってまいる所で、子供神輿といえば当てが外れることが有ってはならじと、一塊に成ってこちらに声を上げます。

 

随分と肩身の狭い事で、貧相な成り行と成って参りましたが、神様の負けと言う事で手打ちと言う事で万事やり過ごして参ります。

 

 ええ別段神様には義理は御座いません。釣り師の頼みごとに仕事をしてもらったことなど無いのですから、相性が悪いのか元々仕事をしない神様なのかは知りません。

ただ子供神輿をやり過ごしたのは後ろ髪を引かれるところ、どうも夢見が具合良くはありません。

 

後日、「子供神輿の分」と添え書きするところで、ひねった包みを賽銭箱に投げ入れたところだ。

 

 

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