備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

「釣り師」になる方法!

 釣り師などといいますものは、そう上等なものでは御座いませんでして、朝から晩まで自分の都合のいいように日暮しなどをしております。頭の中など四六時中魚を追っかけていますので、ほんとのことなど頼み込むのは自殺行為に等しいことになってまいります。

 

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                      山の幸 天候が悪かったのに豊作だ あとは海の幸

 

 

 

  頭の中が釣りの事でパンパンに膨れ上がっている釣り師はなにを考えているかというと、当然釣りのことですが、素人の衆とは質が違ってまいります。寝てはさめ、起きてはうつつ幻の・・もっともっと釣れないか!ああしてこうしてこうなって!よし、あれやってみよう!と何処までも欲深でしつこいのです。

 

 堂前君という人がありまして、ここらあたりでは一級の腕のいい釣り師です。この君、当然頭の中はどうやって釣果を上げるかと、それは病むほどに考えております。そればっかりなのですから当然ご婦人方のほうに目がいくという事はございませんで、釣りと結婚しております。

 

 こうなってまいりますと常人とは発想が変わってまいります。それもおよそ誰も手を出さない領域まで貧欲に手を出すのです。これを世に言う変態、異常執着依存症と申します.

 

 彼は考えた、釣れた時の撒き餌の味、釣れない時の撒き餌の味、どう違うか食って確かめてみよう。魚はなにを好むのか魚の身になって考えるのが合理的だ。  それから彼は手当たり次第、全部の種類の撒き餌、集魚材を口にしてまいります。集魚材のメーカーでは、開発の人は口にするといいますから、あながち変わった事ではありませんが、よほど変わった人以外手を出す代物ではありません。  

 

 これを聞きつけた口さがない外野席の連中は、早速、話の種にします。

 

「あいつ全部の種類食ってみたらしいぞ」

 

「生でか?」

 

「調理したら、味が変わって食う意味が無いだろう」

 

とまあここらあたりまではいいのですが・・・

 

「あいつ、おやつに3時になったら必ず食うらしい」

 

「ばかだなあ!3時じゃあねえ、3度3度の主食じゃ。いまじゃあ米食っとらん」

 

「刺し餌も食ったらしい、砂虫、青虫、本虫、タイ虫、ユ虫、えびにオキアミ」

 

「本虫のムニエルが酒のつまみにいいらしい・・・」

 

「彼女が食べ物の趣味が合わず逃げ出したらしい」

 

本人が居ぬまに、とんでもなく言い放っております。

 

 堂前君は一級の釣り師です、情熱、研究、釣技、隙などあるものですか。その後も他をぶっちぎって釣りまくってまいります。

 

 他の釣り師が今では堂前君と同じ集魚材の配合、餌を使っているのは言うまでもありません。

 

 

「どうやったら釣れる様になりますかねえ?」 よく聞かれますがそのときはこう説明しています。

 

「名人、上手がなにを考えどうしているか  よ~く見て真似をしなさい。そしてどうしてそうなのかよく考える事だ名人の一挙手一投足には全部意味があるから。釣りをせず一日名人の釣りを眺めなさい、それが一番早道だ」

 

 

 

 「誰にも言うな!実はもっと早道がある。魚の餌を全部食ってみる事だ。餌屋の親父に言っといてやる、サンプルに一匹ずつ分けてもらえ、いいか誰にも言うな」