備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

絶世の美女と釣り あるいは「釣魚論」

 

 

 おい浪士供、一寸集まれ!

さて今日の講義は、「釣魚論」を少々・・・・

 

「こら待て! 逃げるな! 美人の話だ!」

なんとも逃げ足の速いことで御座いまして、折角付録で絶世の美女の話しが付いてるってえのに、一寸小難しい話になりますとこのざまで御座います。

 

 あら、まあ、おや、もうお返りですか?最後の美人の話が効いたのですか? 流石、美女と聞いて気短で好色な釣り師、すぐさま取って返します。

まあいい、分かりゃあ馬鹿でも可愛いや、とんでもない美人の話を後でしてやる。

 

 

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 日本の文学の中で古典の中心に座るのは「源氏物語」でしょうが、話を大きく地球の規模で、それも釣り文学に限りますと古典の中心は、アイザック・ウオルトンの「釣魚大全」と言うことに成ります。

 

 日本の江戸時代初期に出版されたこの釣魚大全に引用されている本がありまして、当然引用されるのですから、釣魚大全より以前に出版されたものです。

その本の名前は「釣魚論」と言います。

 

 

 あたしだってねえ、本音を言うと小難しい大層なことは避けて通りたい口で御座います。ところが釣りに関する本を読み進めて参りますと、どうしても読んでおかねば、流れからして勘所を押さえず、各種の本を読むということになってまいります。

 

 手に入れて放っておいたのです。題名からして如何にもいかめしいでしょ。「釣魚論」この題名でそそられて読もうなどと言う人は、それは余程難しいことが好きな人か、世間知らずが知性派を気取る時ぐらいなものです。

 

 諸兄、食わず嫌いはいけません、外見で中身を判断してはいけないのです。すいませんでした。私が悪う御座いました。

 驚きました。この本が当時書かれた物とは思えぬほど完成されていたのです。

 

 この本の言う所は、まず釣が人の心をいかに楽しくさせるかに始まって、竿・糸・針・結び・魚に対する糸の選定・仕掛け・浮き・釣り方・ポイントの選び方・時合・釣りと天候・魚が連れない12の原因・釣り餌・餌の保存・毛鉤り とまあこうだ。

 

 当時は釣具やさんなど、どこにでもあるわけは無いので、いきおいその作り方からだ。イギリスでこの本がまとめられたのは、すでに作れるだけの加工技術が底にあったからで、何処でも何時の時代でも、釣り師の努力と工夫は続きます。

 

 え、「絶世の美女」はまだかですって?

はいはい、これからこれから。この話と美女との関係は、この「釣魚論」を書いたのがジュリアナ・バーナーズと言う人で、おまけに絶世の美女だったと言う訳だ。

 

 この美女が針の焼きいれ焼き戻し、馬の尻尾で作る糸の制作方法、竿の作り方、各種魚の釣り方まで、事細かに書いておられるのです。

女性ですぞ。美女ですぞ。それも絶世の美女ですぞ。

 

 この方のすばらしいのはここでは終わりませんで、釣りの環境に心を配れとおっしゃっていることです。「腹八分は何にも勝る」ものであるし、釣はこうでなければ楽しみもなくなるとおっしゃっているのです。

又乱獲や職業漁師のものに手をかけてはいけない、その様な輩は、絞首刑にしてしまえとおっしゃるのです。

何はともあれ従わねばなりません。相手はとにかく絶世の美女なのですから。

 

 

 この美女、貴族の娘さんで、あろうことか後には修道院の院長を務めた人であった。随分男らしい過激な美人尼さんもあったものです。

 

 どの時代にも抑制の聞いた、大人の釣りが求められるものです。おい、おまえら・・・・

 

 あらまあ・・浪士供どこいった・・?

 

さては尼さんと聞いて逃げたか!

 

それとも首が絞められるようなことをしやがったか・・!