備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

タダより安い魚があるんだそうだ

 

 船頭の船、最近やけに船足が速い。さては相当厄介ごとでも抱えて、釣り客はそこそこに、立ち回る算段でもしているのかと思ったのだが。

 

 

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 事はどうやら単純で、船底に付いたフジツボなどを綺麗にしたため、早くなったのだった。船底のフジツボなどの汚れは、大層船足に影響するもので、最近の船足はそりゃぁ便秘が治ったような走りなので、読み違えてしまった。

 

 今年は長雨で漁師が不漁で泣いていたが、悪い事ばかりではなく船底にフジツボの付が悪く、年4度の掃除が今年は2回で済んだらしい。万事が悪いと言う事でもない。

 

 今年の船頭の話は漁師の不漁に尽きる。この地の特殊な事情かどうかは分かりかねるが、こう再々話になるところを見ると、かなりの痛手らしい。

 

船 「この辺の内海はたこの多いところで、これはまだ値が付くからええけどな」

船 「ここはスズキも多い所で、昔は出世魚が喜ばれてな、大層稼がせてもらったも んじゃ。今卸し問屋に持っていってみい、いる数しか引き取らんで、値段なんか話にならんくらい安い」

船 「誰もあの魚相手にせんようになった」

 

浪 「そいじゃあ、ぼらやこのしろは?」

 

船 「引き取り拒否、買うものがおらん」

 

浪 「はいな、タダより安い仕打ちかい?」

船 「一寸前までは、ぼらは一匹10円でいやいや付き合いで引き取りよったが、今じゃあ拒否、拒否」

 

浪 「それじゃあ何かい、タダより安いってえなあ一体いくらなんかい?」

 船 「・・・・・・・・」

 

まてよ、タダより安い魚を喰いたいと思ったら、どうするんだ?まさか金を払って特別仕立てで獲ってもらうのか・・高いもんに付くが・・・

 

 タダより安い魚はタダより高いか、なんとも妙な具合になったもんだ。

 

知り合いの漁師、魚価が安いので量を獲らねばヤレンらしい。その上魚の量全体が少なくなっているので困っているのだそうだ。それでも成り立っていかねばならないので底引きの網の目を小さくして、今までは逃がした分までさらう手立てに出たそうだ。

おい、そりゃぁひょっとして自殺行為という奴じゃあないかい?

 

 なんだか承服はしがたい話だが、切実な当事者にしたら、切羽詰った話と言う事になって切ない話である事だ。

 

 釣り師の側からしても、昨今は見たことも無い魚が上がってくるし、今年は狙いの「あこう」など昨年の半分だ。この地方だけの特異現象ならいいのだが、全体的にはどういう具合であろうか。

 

 そういえば今年はぼらの寄りが悪かった。餌取りの小魚も活性が悪い。

 

 はてさて、タダより安い魚は金がいる、そんな魚に相手にされなくなったか。