備後あこう浪士 討ち入ります!
本日はあこう浪士、晴れて討ち入り決行の日だ!
取り立てて刃物を研ぐわけではありません。研ぐのは大人気ないやり口の、たこ泥の野朗に向けた牙だ。
たこ籠の始末、人を帰り観ない自分勝手な奴に対する行儀で御座います。
犯人は犯行現場に必ず帰ってくる。 味を占めたのですから間違いありません。
皆さん共有している釣り現場のたこ壷とたこ籠、ことごとく引き上げて中のたこ2匹持ち帰ったはいいが、たこ壷は引き上げたまま、たこ籠はひとつはなくしてしまい、残った籠はこれまた引き上げたまま。
他人様のことを考えたら、それぞれ掃除して、寄せ餌の一つも付けて投げ入れて置く、後の人のことを考えねばなりません。自分さえいい目をしたら、後は野となれでは、これは世間が許しません。
船頭に聞くと、たびたび筏に乗るとても素人とはいえない御仁らしい。お前さんのためにこちとら、いつもお膳立てしているわけではありません。
ここは一つ、ゆっくりと成敗してくれましょう。
さて手はずの事など。 まず、たこと同じ目方のレンガを持ち込みます。それに「ご苦労様、アカンベー」のプレートを用意いたします。
新しくしつらえた籠に、レンガとプレートを入れます。そして知らぬ顔の半兵衛、水中に沈めておきます。 細工は流々、あとは・・・・・
犯人が現れます、前回の事がありますから又たこ漁りに励みます。
「おう、ロープを引き上げるか。おや、此れは重い! 前回のように 又入っとるわい。しめしめ、ラッキー~」
「よし今夜は刺身にてんぷら、たこ飯にから揚げと・・・おお上がってきた^」
「な・なんじゃこりゃあ~・・ご苦労様アカンベーだと、重いはずだレンガが・・・」 「くっそー馬鹿にしやがって」
とこうなります。
そして冷たい笑いと覚めた目でおもいきりあざけってやります。
こういうくそ悪さ、計画を打ち明けたら乗って来る来る。我も我もと同志が賛同し集まります。 あなた方一寸溜まってるんじゃあ有りませんか、と言う位の乗りで御座います。
何時現れるか分かりません、ことを分けて話し、何時来てもいいように、監視の目を張り巡らしました。来たが最後逃げられるものではありません。いざと言う時は船頭が見届け人です。
レンガは建具屋さんが事前に持ち込み、プレートは水に大丈夫な造りで本格的な奴を別の人が段取りします。
おっ・・奴の足音が・・・・
各々方 出陣で御座る! 油断召さるるな!
たこ籠荒らしの奴がかごを揚げます。 中からこのプレートとたこの代わりに入れたレンガのかけらが出てまいります。