釣り師の言い分 待てお巡りさん! 撃つな!
どちら様も 暑中お見舞い申し上げます。
こう暑い日が続きますといかに吹きっさらしの海上とはいえ、それは暑う御座います。
程よい気温ならいざ知らず、こう暑いと、いかにいかに守銭奴のごとく釣られる浪士様とはいえ集中力を維持するのには苦労される事です。
釣りに集中力というのは大変大事な事で御座いまして、これが欠けてまいりますと、海に落ちるのやら、筏の上で転ぶもの、はては魚に不意に仕掛けを引っ手繰られて竿やリール込め海中に持って行かれることとなって、当の本人には不本意な事でありますが、善意の第三者にとっては、揚げ足取りの格好の餌食と言う事に成って参りまして、大層目出度い事と成って参ります。
釣り場で集中力を欠くというのは、強い風であったり、暑さ寒さ、それに雨と自然界から受ける仕打ちが多いもので御座います。もちろん相性の悪い人と一緒に成った時なども気持ちが乱されますから、これは面白くない事です。
人間なども自然界の成り立ちの一部と思えば、これは有ることで御座います。
見切りということが有りまして、もう今日は駄目だとあきらめる事があります。こうなりますと さあ殺せ! どうにでも成れと言う事になってそれは散漫に成る事です。集中力が欠けて散漫になると、もちろん魚など釣れては参りません。
「ご主人、申し訳ありません交通安全のため検問をさせていただいとります、免許証 拝見出来ますか?」
さてどうするか。
魚が釣れて機嫌がいい時ならいざ知らず、今日の浪士様は ちと機嫌が悪い。こんな日に限って交通検問に引っかかる。
思うような釣りができた日であったら
「ああ、ご苦労様です。暑いのに大変ですね」などと普通の対応をするのだが、今日は一寸ばかり面白くないのですよ。何しろ魚が・・・・
警官
「すみませんお疲れのところ、免許証拝見できますか?」
浪士
「はいはい、見せてもいいが持っておったかどうか・・・」
警官
「免許証お持ちじゃあないんですか?え・・」
浪士
「ところで、わしに指図するあんたは一体誰なんじゃ・人に頼み事をする時は
まず名乗れ・・怪しい奴じゃなあ・・警察に通報するぞ・・」
「自分は東署の交通・・で・・ですから・・うんぬん」と有って押し問答に成ります。素直に免許証を提示すれば済むことなのですが釣り場の鬱憤はどこかで晴らさねば成りません。
浪士
「分かった免許証は見せよう・・・自分で取り出すがいいか?・・そうかよし出
そう・・・ その代わりお巡りさん(撃つな!)」
当然両手を挙げます。
警官
「ここはアメリカじゃあないんですから・・撃ちませんよ・・・」