備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

おい青年、今度釣りに来る時 よ~く鼻くそをほじって来な! 

 

 

 釣り師が釣りを楽しいと思っておるので御座いますから、端から眺める衆にとりましても、楽しげに写るもので御座いましょう。その上獲物などが手に入るものですから、欲深い初心者はそろりと片足を修羅の世界へと突っ込んでまいるのです。

 

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 さて名人と呼ばれる方が手下どもを従えて今日も出陣です。

彼は以前紹介をいたしましたところですが、この界隈では腕はもちろん知識のほうも一流で御座いまして、その上研究熱心と来ておりますから隙などどこにもございません。

前後左右さえぎるものが無いとはこのことで、肩で風切る釣りとはこの名人にこそふさわしいところで御座います。

 

 出船前の船着場は雑然としております。道具などで足の踏み場も無い様とはこのことで御座いまして、はやる気持ちがそうさせるのか出来るだけ船に近いほうに置こうとします。 他人様より数センチ前においたところで何がどうこうなると言うわけでもありますまいに、競って雑然とした混乱を作り出してまいります。

 

 手練の人であるとかベテランに成りますとそこは悠然としたもので、道具など綺麗に次の動作に効率よく動かせるよう 整えられております。雑然と管理されるのではなく整然と管理されておるもので御座います。

ここいらが釣り師の手の差となってまいるのはいうまでもありませんで、見る人はこのあたりを黙って見ているものですから、あまり粗末な振る舞いなど外には出せません。

 

 さて当日、名人6人の一行でありまして一からげで面倒を見ることなど、これはいかにも手に余るので御座います。

「浪士さん、その二人面倒を見てくれんかい、手は並み、別に噛み付きはせんからたのむわ」こういうことで面倒を見てまいります。

 

 面倒を見るといいましても、手取り足取り教えると言う事ではありませんで、世間話に毛が生えた程度のもので御座います。そして釣りの合間に気が付いた事を話す程度なのです。

 

 この二人釣りはそつなくこなします。名人の仕込みですからそれは並み以上の技を繰り出してまいります。

 釣りを覚えるのはこれは学校が御座いませんから、技術を誰かに教えてもらわねば成りませんし、本 動画で研究と案外に教えるところが無いものです。通り一遍の事などこれで用は足りるのですが、これはほんの上辺だけの話で、いくら上辺をなぞったところで魚は釣れては参りません。釣れるとすると間違って釣れるぐらいのもので、満遍なく釣ろうと思いますとそこから先の事を分からねばなりません。面白さも苦悩もそっから先に有るものです。

 

この二人そこのところを習おうと言う思惑で名人についておりますが

 釣りを見ておりましてどうにも勝手が違います。なんと言うか、やはり表面の動作だけのような気がするのです。

 

「おい名人さんよう あの二人一応格好はついとるがどうにも踏み込みがたりん、こじんまりまとまってはおるが、そっから先がないんと違うかい?」

 

「そこじゃてや!あのままでいいと言うんじゃ、ポツリポツリでも釣れればいいらしくてそっから先の領域には足を突っ込まん、皆横並びで突出しようと言うのがおらん」

とこういいます。

 

 こじんまりまとまった無印良品のような青年はそれでもぽつりぽつりと釣り上げましてそれはそれで楽しそうなのです。

 

 まあそれで納得しているのなら、それも有りです。言うことはありますまい、思うように生き延びてもらいましょう。

 

 

「おい青年、今度釣りに来る前にな よ~く鼻くそをほじって耳の掃除、それから足の裏をしこたま擦って来てみな・・今日と何が違うか分かったら贅沢な釣りができ出すと思うぞ」

 

 と言ってはおいたのです。

 

 

 

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