備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

人は何故釣りをするのか!  「 釣り師と人民 立て飢えたる者! 」

 

 

 秋只中、渡船場に違和感が行き渡り好奇の目が注がれる事でした。

 

釣り師といえば相も変わらず たむろいたしまして、下司で下世話な話で持ちきりの事ですが・・・・。

 

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 場の空気が変わる、一閃するということは有ります。日常に異型の物がからみますと、人はその事態を理解しようといたしましてよく観察するもので御座います。

 

 岡山ナンバーの車が渡船場に入ってまいります、違和感の無い日常でして目出度く釣り日和であることです。

車から二人の釣り人が降り立ちます。それまでにぎやかであった渡船場がにわかに口数少なくなりまして、そこから場の空気が変わります。場の空気を替えたのは二人の出で立ちで御座いました。

 

二人の出で立ちと申しますと、これが毛沢東時代の前時代的な人民解放軍の服装によく似ておりまして、並み居る釣り師の口をつむがせるのです。

釣り師の服装と言いますものは、着古しておおむねくたびれておるものですが、この二人の服はよりくたびれておりまして、その上帽子まで似通っております。

釣り師は己の立ち位置を、当時の中国なのかそれとも人民解放軍が攻めてきたのか見極めねば成らぬ事でした。

 

 天候の具合も釣り師に微笑んだ釣場は、朝の出来事は彼方に飛んでおりまして、何事も無かったように進行してまいります。

機嫌よく皆釣りをしておりまして、頃合は昼時と言う段に成りまして騒動は起きて参ります。

 

  みな弁当を使い始めた頃、人民二人が何やらもめております。静かな場所でのいさかいですから聞き耳を立てれば内容などすぐ知れます。その上、海の上などさえぎるものはありませんから、事情などすぐ知れる事です。

 

 何でも岡山から6~70キロ、ナビを頼りにたどり着きやっと待望の釣りです。やがて昼時に成りましてさあ大変、コンビニで買い求めた弁当をごっそり車に置き忘れたらしいのです。

このような時は大抵、責任のなすりあいに成るのが相場で御座いまして、「飢え」が絡みますと、これがかなり醜い事に成って参ります。釣り座も並んで釣っておったのですが、少々間を空けてまいるのですから、帰りの車中が思いやられる事です。

 

 こんな事態に成りますと我々釣り師も弱ってまいります。知り合いなどでありますと「おい、恵んでやる」と軽口の一つも吐いて余分の食い物などあげるのですが、みず知らずの人にこれは出来ません。悩ましいところなのですが、余り差し出がましい事もできません。事が生き死にならば別ですが、なあに一食抜いたぐらいじゃあくたばっては参りませんから、手出しは無用と皆気付かぬ振りなのです。

 

 

 しばらくの後、この「飢えたる人民」二人は、やおら立ち上がります。

 

何を始めたかと申しますと、スカリから釣った魚を取り出します。そうです食料は人民自ら確保していたのです。

魚を捌いて飢えたる人民二人して、調味料も無いのにむさぼり食べております。そこには先程までのいさかいなど影も形も無い事です。

そしてそして、そこには、他人の助けを借りずに自立した、力強い人民の姿があったのです。

 

 浪士様はそこで気付かれます。そしてついに難題であった「人はどうして釣りをするのか」と言う命題に答えを出されることでした。

 

    人は何故釣るか! 釣った魚で生きながらえる為に釣る!  

   

   

 

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