備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

瀬戸内海に「瀬戸内密漁会」なるものが現れ出でたのだが

 

 

 海上の波風はお天道様、あるいは神様の采配で、いかに傍若無人な振る舞いの釣り師とて、これにはひれ伏すことで御座います。

 

 穏やかなる事を身上とする瀬戸内海様ですが、天界の思し召し以外にも釣り師が巻き起こす、天に唾する行為で今日も釣場はしばし荒れてまいります。

 

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 さてお立会い、やあやあ遠からん者は音にも聴け、近くば寄って目にも見よ!我こそは何を隠そう「瀬戸内密漁会」なるぞ!とばかり大胆不敵にも衆目にこれ見よがしに、「瀬戸内密漁会」は参上したのでした。

 

  それは日常と変わらぬ釣り日和で御座いまして、どの釣り師も胸算用には蓋をして一躍渡船に乗り込むのでした。

道具など積み込みまして、さあ相整いましたところで・・少しばかりの違和感が出てまいります。

日常生活の中に有っては少々不穏当な文言がちらつくところで、好奇心旺盛な釣り師の好奇心は次第に抑えようの無いものに変化して参るのでございます。

 

  「ところでなんだが、兄さん密漁会とはかなり穏やかでないところだが、密漁するの

  かい?」

  「いえ、その・・まあ・・」

 

  「 あわびかい? それともなまこ・・・?」

  「そういうことでもな・・い・・」

 

  「潜るのかい? 突くのかい? それとも手りゅう弾でも投げ込む・・?」

  「いえ・・・」

 

  「おい皆んなこの会はお二人だけらしい、どうだい面白そうだ、会に加えてもらお

   うか!」

   「おお! これは・・白昼堂々大胆な!」

  「入会金はいくらで月の会費はいくらだい?」

  「儲かりそうじゃな、竿の新しいのが欲しいんで会に入れてくれ」

  「わしも! ルンバが欲しいところで渡りに船たぁこのこった」

  「申し込みはわしが一番で頭取、あんたは二番で若頭、そっちは三番で三下、道具

   運びからやってもらおうかい」

  「申込用紙が入るなあ!趣味の欄は釣りとは、まどろこしいところで書けんな」

 

 密漁会なるものあれよの間に、組織から会費おまけに人事など寄ってたかって大幅改変、元の形など見る影もありゃあしません。海千山千の釣り師にかかっては、弱小密漁会など何の痛痒も無く巻き上げられるところで御座います。

 

 初期密漁会のお二人、世の中に少しばっかり大胆に肩肘張ってしまった。事の性格からしてもここは密やかに事を行のうべきところであったろうに、誠にもって相手が悪かった。いまさら大書した文字を隠そうなど出来るわけがありません。残念だったねえ、少しは世間様から注目して欲しかったんですかい? ちょっと残念だったねえ、他では通用するかもしれませんがあいにくここは釣場だ。なまじの小手先なんざぁ通用するもんじゃあありません。 腕と釣果と男ぶりしか幅を利かすもんが無いんで御座います。

 

 まことにもって釣り場といいますところ、様々思惑のあるところで奇怪な人種が跳梁跋扈するところで御座います。

 

 して、密漁は?ですか・・。 そんなものは欠片も拝めませんでした。

 して、初期密漁会の二人の釣果がどうだったかですって?

 

 それはまあ・・ そんなもんでしょう!

 

 

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