備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

フィッシング カースト  要するに釣場の格付けのことですな

 

 

 

 世の中には、ついつい序列をつけたがる癖のようなものが有りまして、様々序列をつけてまいります。

 

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 釣場におきましても勲章をぶら下げるなどはっきりしたものは御座いませんが、格付けなど強固についておる物でして、釣果が歴然といたしますところから、この呪縛からは逃れようにも逃れられないもので御座います。

 

 この序列格付け成るもの、表立って振りかざすようなものではありませんで、釣りなどと申しますのは、それぞれ納得の違うところで嗜んでおりますから、権威を振りかざしたところで相手にもされませんし、そもそも比べようの無いものに成って参ります。

 

 本場インドのカースト制度について、かの国の人に聞きますと、説明も複雑なら、日本語も不十分、その上こちらの理解力も不足がちと言う、混乱を極める事と成って参りまして、とどのつまりがよく分からない。

 

「虎は最近大事にされだして、虎が人間を襲っても怒られないが、人間が虎を襲ったら怒られる、こっちのほうが面白いでしょう!」

「面白くないかい?」

「虎は人間の首筋を襲うの、だから一発でやられるの。だから食べられる時は痛くないの。熊は腕を振り回して身体を襲うの、食べられる時は足や体から食べられるから、生きて食べられるの。だから痛いの、面白い?」

 

 と、熊や虎に食べられた事の無いインド人は微妙に話が移行しているのだ。

 

 

 釣り場にたむろする人には素人、釣り人、釣り師と大きく大雑把に分けられる塊が有ります事で、今日も思惑を抱えて余り褒められた事ではない釣りに、終わる事の無い夢を見るので御座います。

 素人の衆は魚を釣ってみたい人で、釣り人の衆はそこそこ釣れるので魚が欲しい人、釣り師は目先の魚は余り欲しがらないがこうして釣りたいと頑なにこだわっている人、とまあ分けられるのでしょうか。釣り場と言いますのはこれらが混然一体となって、それぞれ浅ましく立ち回るところだ。

 

 

 さて釣場に向かう渡船場、それぞれ下手糞は下手糞同士、上手は上手なり、それなりはそれなりに群れを作るところで、釣れもせぬ魚をもう釣った気になっておるのですから、どいつもこいつも此れほど目出度いという事はありません。

釣場に向かうとき釣り師は決して悲観的には成りません。一山当たると思うから無謀にも向かうのでして、この時今まで散々泣かされた来た事など今回も綺麗さっぱり忘れ去って、頭の中ははや大漁! 決して現実など見ようとはいたしません。

 

 このそれぞれのランクの衆、似た者同士で猿団子といいますのは、格付けがそうさせるのではございませんで、「話が合わない」 「話しても分からない」と言う現実的な壁が有るから、いきおい釣りの話をする場合こうならざるを得ません。

釣り以外の事なら、少々の悪巧みからご婦人の話、差しさわりの無い天気の話と、それは垣根など無い事です。

 

 世の中にはかなり背伸びしたい身の程知らずという輩がおるものでして、垣根など一足飛びに越えて、上位のカーストに割り込もうなどと企てて参ります。武器は雑誌や聞きかじった知識と成っておりまして、これを振りかざしずうずうしさを援軍に割り込んで参ります。

 

 技術、技などと申しますものは口で説明出来るものではありません。あくまで実践が評価されるものでして、押し付けがましいカースト破りなど、とうの昔に格付け済み、歯牙にもかけるものではありません。

 

 昔はこの手合が現れますと、寄って崇って行儀と仕置き、ぐうの音が根絶やしになるほど始末を付けたものですが、釣場のカーストなど自分次第でどのようにでも成るものです。 大人気ない仕打ちなど振り回すまでもありますまい。

 

     よる年波は捨置く技を身につけたようだ。

 

 

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