備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

お巡りさんと養命酒と釣り師 

   

 

 酒は百薬の長と申しまして、どちら様も身体にいいなどと言い訳をしつつ、思わず頬が緩んで参るところで嗜まれております。

何ですな、この酒と申しますのが大層な種類のあるところで、甘酒から猿の苔酒まで様々工夫されておるところで御座います。

国によっても各種民族様それぞれに準備されるところと成って、それぞれ頬を緩めておるのですから、人様と酒と申しますのは切っても切れない悪妻の縁のようなものなので御座います。

 

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  若い衆が有って、やんちゃなのですが大層釣りが好きと来ております。

何でも運送業とやらで、暇に飽かしては釣場に顔を出して参ります。

遠方にでも運送の仕事で赴くのでしょうか、しばらく顔を見ないと思ったらまた立て続けに来るという按配で、不定期に集中して釣りをして参ります。

 

 若い衆にしては結構な腕前である事で、元々才能が有ったのかと思うぐらいですから気楽にひょいひょいと海中から魚をつまみ出します。

話好きでにぎやかなのが好きと来ておりますから、どの釣り師ともよく話をする上、釣った魚を惜しげもなくあげるのですから誰からも当てにされ好かれております。

魚をあげるのはいつ旅に出るか分からぬ為、その上独身ときていますから持ち帰っても処置に困るかららしいのですが、彼が来ると海上に魚屋さんが出現したようなものなのですから、それは重宝されて参ります。

 

  若い衆の言うには

「トラックで重量物を積んどったらよう目の仇にされるんで」

「そこらじゅう重量オーバーを取り締まりよって、ものの言い方が悪かったら寄ってたかって粗探しよの・・むげえ目に合わされる・・ははは」

 と屈託は無いのですがあちこちでかなり痛い目に合わされているらしい。

 

 

 釣り師などといいますのは思うように魚が釣れて、日がな一日満足できれば至って機嫌がいいのですが、これが思うように釣れないと成りますと深刻なこととなって風雲急を告げるので御座います。

 

「お急ぎのところ申し訳ありませんが免許証を拝見します」

「何か事件かい?」

「事件ではありません、型通りの事で、最近交通事故が多いですからご注意くださいということです」

 

親切ごかしで、その底には粗の一つも探し出そうという魂胆が隠れているのは、散々痛い目に合った若い衆にはお見通しで これが釣れぬ腹いせにあらぬ方向に火がついてまいります。

 

 一通りのやり取りの後・・

 

「飲んどってでは無いですね・・?」

「飲んだけど・・何か?」

「・・・・・は!・・」

 

いくらなんでも釣れなかったからと言ってお巡りさんをからかう挙にでなくても良さそうなものですが、日頃の鬱憤に今日の釣果が追い討ちをかけたのですからいたし方ありません。

 

「殺していま運んどるし・・」

「・・・・・は!・・」

 

 交通検問のお巡りさん全員が集まるのは当たり前で御座いまして、飲酒運転の上殺人ですから水も漏らさぬよう取り囲んで参ります。交通検問などけちな捕り物などやっている場合では御座いません。

 

「何処で飲んだ・・ああ!」

「夕べ家で養命酒を猪口一杯飲んだ」

 

「殺人は・・ああ!」

「人は殺したたぁゆうとらんで・・クーラーに殺したチヌが3匹・・」

 

 馬鹿な事を企てるのですから、これはれっきとした公務執行妨害まがいと成るのです。

 

「あんたあ警察を弄りもんにしたらいけんで・・ああ・・」

 

 この後猫がネズミをいたぶるように散々仕置きをされた上に

「あんたタイヤをやすりで丁寧に削って仕上げ取るなあ・・溝が無いで・・」

「魚を絞めたナイフを出してみんさい・・長さによっちゃあ面倒なことんなるで・」

 

 

 事の顛末は概ね以上の事らしいのだが、屈託無く面白そうに話すのですから、こやつ次の企てを考えているに違いない。

 

 

 

 

本日は釣行のため充分な対応が出来かねます、あしからずご了承下さい。 

 

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