将棋で浪士様に挑もうなんぞ100年早いわ !!
「近頃の若いもんは」
などという台詞をまきちらすのは、いい加減新しい才能を認めて収まるところに収まるべきなのに、枯れすすきになりそこねたじじいの台詞でございます。
何も心配せんでも新しい才能は湧き出てきているものでして・・、というわけで今脚光を浴びている藤井聡太君に触発されて、にわか将棋にうつつを抜かす話ではございません。
森川君は隠しきれないほくそ笑みを必死に押し殺して、さも「将棋の勝負など眼中にございません」、釣りを覚えて酒の肴もほしいが釣りの教えを乞うには浪士の野郎の前で少しばかりは卑屈にならねばならん、つまり愛想の一つもせねばならんが、ここはひとつ我慢のしどころで釣りで卑屈になっても将棋でへこましてやるわい、興味はあくまで釣りでございますの顔つきでごまかすかと、階段を昇ってきやがるのです。
今回のお話は最近釣りを初めて面白くってしょうがない森川君ということで、釣りを覚えたての釣り師まがい、まあ半端な奴がしっかり返り討ちに合うという、実に痛快無比のお話となっております。
浪士 「まあなんだな最近の若い奴ときたら、、腋の甘いのが多くって、まだ年寄り
の面目がしこたま立てられる。誠に適当な出来で目出度いこった」
森川 「さてさてそこじゃてや、出来が良すぎるとわしらの面目丸つぶれですけえ
の、適当な出来がちょうどよいですの」
浪士 「しかしじゃな最近若い衆の中で、世界規模で頭を獲る才能が各分野で出てき
ておるでそう油断もできんて、将棋の藤井聡太君あたりになると宇宙人の人間離れした
才能じゃからな、ところであんたは将棋は指すんかい?」
この将棋という台詞を聞くや否や釣りを伝授してもらうまでは卑屈を気取るつもりの森川君の眼鏡の奥が残忍な光を放ったのは隠しようもありませんでした。
森川 「 まあ将棋と呼べなくはないんですがね、まだ駆け出し将棋、小学生に手もなくひねられるんですから板切れの上にマーブルチョコを並べる程度で、とても将棋と呼べる代物じゃあございません。 将棋を指されるんでしたら程よく手加減のほどをお願いします」
とまあ私はへたくそ素人ですと、釣りでいうところの誘いですな。さももったいぶっておいしそうな餌に見せるんですな。 ということでありきたりの誘いで将棋に誘い込もうと致します。
まあまあ釣りの腕からしても大したことはなかろう、大やけどには至るまいと、ここは一番その誘いに乗ったのが悪かった。
最初のうちは勝ったり負けたりを繰り返しておりますが、しばらくするとどうにも歯が立たない。
つまり全戦全敗、 完敗というのはこのことを言うんですな。
浪士 「お前さん、慎みとか手加減とかいう理屈は持ち合わせておらんのかい・・?」 まあ泣きが入るとはこのことです。
釣れないとなると釣り師は全身全霊を叩き込み傾向を分析したところで対策を立ててまいります。何としてでも釣れるまでくりかえします。
この執念をほかのことに振り向ければ、世間で少しは出世しただろうにと思うのですが、釣り師は他に振り向けがきかないのですから始末が悪いのです。
ま、しこたまあがき苦しんだところで、必殺の勝利方程式を編み出してまいりました。
浪士 「森川君今日はあんたが命日じゃ、覚悟せい・・!」
こうして世紀の対決となってまいります。
対局が進むうち途中から 「はさみ将棋」 に変更してやりました。王手となるや否や電光石火の早業で王様を取ってやりました。
森川 「あ・・それは・・無茶・・ダメ・・」 とか抜かしておりますが追い打ちで言い放ってやります。
浪士 「将棋に違いあるまい!どうだ参ったか!」
とどめの台詞はこうです
「待ったなしで・・!!」
今度将棋で挑んできたら「金ころがし」でもやってへこましてやるつもりです。