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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

どうだい 明日も釣りに行くかい?

 

 この連休、土曜日のことでした。一本の電話が掛かってまいります。

 

浪 士 「浪士様、明日はどうされます?天気も良いし・・絶好の・・」

 

浪士様 「おう、明日は釣行予定じゃ。寒うはないし釣り日和じゃ。ところでお主、今日行ったんじゃあないのかい?」

 

浪 士 「何をおっしゃいますやら、浪士様を差し置いて抜け駆けなど滅相も御座いません、 あとの仕返しが恐ろしゅうございますし・・・今日は明日の準備です」

 

浪士様 「潮の具合も天気もいいわい、   どうのこうの・・」

 

浪 士 「どうのこうの・・・」

 

浪士様 「ところで今日は何匹釣った・・?」

 

浪 士 「ええ今日は5匹で・・・・・・あっ!・・・」

 

 なんのこたあない、きっちり抜け駆けをしているので有りますから、明日はいびり倒してやらねばなりません。

 

 

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 何しろ油断もすきもあったものではありません。人の技は盗むは抜け駆けするは、まだ人様のものに手を掛けないだけましの、かなり商品価値の低い人間で御座いまして、何食わぬ顔で当日も現れてまいります。

 

 「おい、随分律儀に出勤するなあ、皆勤賞もんだな。こりゃあ明日も出勤かい?」

 

 「いえいえそんな、明日もだなんてねえ、・・浪士様が御出でになるんでしたら、お付き合いと言う事もありますんで、出かけて参ってもようご座います」

 

 「よしよう言うた。明日も出陣じゃ!」

 「はい、頑張って今日も明日も・・」

 「おい、昨日を忘れとる」

 「はい、頑張って今日も明日も昨日も、頑張って頑張って」

 

 かなり調子はよいのだが、軽くていけません。一般社会ではこれくらいの最軽量ミニマム級の扱いしか受けていない御仁なのですが、これが釣りとなりますと豹変してまいります。

 

 豹変君子の釣りは傍目から見ますとそれは神経が参ってきます。他人がそう思うのですから、それは大層な変わりようで、一心不乱、朝から晩まで息をつめております。端から声をかけるなど言語道断、はばかられる事きわまれり。 一日飯も食わずに釣るなどしょっちゅうの事で、同じ趣味を持たぬ人から見ればこれは修行です。

 

 釣りの趣味を持ったが為に本性が現れたのか、惜しい事だがこの集中力と根気、実社会で役立てたらどれだけの出世につながったかと、・・・いやいけません、これは言うだけ野暮だった。

 

 当日は嬉しい事に、この抜け駆け野朗には一匹も、  ええ只の一匹も釣れませんでした。やたら人生の貴重な時間を浪費しただけです。

こうなりますと、そりゃあ疲れます。釣り師などといいますものは現金なもので、釣れておりますと足取り重たく心は晴れやか、天下は手中なのですが、その反対となりますと疲れのうえにもうひとつ疲れの追い討ちがかぶさってきますから、それは無残な落ち武者と成り果てます。疲労困憊・青息吐息どちらの文字を当てはめてやりましょうか。

 

 「おまえさん、明日の釣りは一番からかい?」

 「いへ・・もほ・・あひた・・は・・」

 「何を言う!予約名簿に書いたろか? うん?」

 「おい、みんなこいつは明日も来るそうじゃ!可愛がったれや」 

  「ためれす・・ひぬ・・ころはれる」

 

 このように過酷な目に合いましても懲りない釣り師、二日も有ればよみがえってまいりまして、その生命力はかなりしぶといのです。

 そう、ゾンビなど、洟垂れ小僧は相手にならない事です。