備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

ココ壱番屋のカレーの食べ方

 

 

 いえいえ、この期に及んで食べ物の報告に方針転換してやろうなどとは思っておりません。食べ物の報告など数多くの人がなさっておいでの所でして、割り込もうなぞ大それたことは致しませぬ。

何しろ、しがない釣り師の出っ張ることではございません。

 

 

 釣りを終えて数人で小腹がすいたところで、さてどうするか。

 

 

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 ここは手っ取り早く、腹を朽ちさせる、おまけにその日の釣りの反省を、釣果の良かった人は自慢したいだろうし、その上釣れなかった奴を肴に思い切りあざけりたいだろうし、会話の中で次の釣りのヒントの一つも探ろうなどと人さまざま算段の有るところです。

 

 釣りは現実の生活とはかけ離れた浮世離れの所がございますもので、そのまま家に帰りますといきおい現実が待っております。

 

 いい心持の所から離れがたいのは人情と言うものでございまして、しがない小市民釣り師どもにおきましては、もう少し群れていたい。もう少し釣れなかった奴をおもちゃにしたい。

 

 

 そこで、ココ壱番屋の看板が誘うのです。

 

 

 すっかり国民食になったカレーを口にして遠慮のない会話をいたしておりましたら、ふくよかさが二人分はあろうかという御夫人が入っておいでです。

最初は気にも留めませんでしたが、そのうちふくよか御夫人の方からやたらカチャカチャと音がしてまいります。 

見ると御夫人、豪快に皿の物全体をかき混ぜております。

我々は少しずつかき混ぜて口に運んでおりましたので、まず一気に全体をかき混ぜて口に運ぼうとする大胆な御夫人のやり口に少々唖然としてまいります。

 

 少々にしろ全体を一気にかき混ぜるにしろ、かき混ぜることに変わりはなく、一気にかき混ぜるほうが合理的と言えばそうなんですが、どうもやり口が上品には思えません。

 

 カレーと言えば、インド人でカレー屋をもう三軒もの所帯にしたディリープ君などもではどうするか、スプーンを使うときには口にする分だけをかき混ぜて食べております。

手で食べるときにも口にする分だけを器用にこねて食べております。

 

「食べ方はないんで、好きに食べたらいいんですが」とカレーの本手は言います。

 

 

 ふくよか御夫人のあまりに豪快な混ぜっぷりとの、そのあとの喰いっぷりに、さしもの釣り師連中もあっけにとられ、次第に口数が少なくなってまいります。

スプーンに盛る量と口に運ぶそのスピード、そして噛んでいるのか流し込んでいるのか

電光石火、あれよの間に皿を空にした御夫人はゆさゆさと体をゆすって、何ごともなかったように席を立ってゆきます。

あざやか、あっぱれでござる。

 

 食べるにしてもこうなると一種の芸で、なまじ素人の及びのつかない喰いざまを見せられると、これは黙るしかなかったのです。 が・・

 

「おい、見たか・・!」

「ありゃあすごかったのお・・・!」

 

 

 心なしか小声になった釣り師、未だ見たこともなかった見世物ですが・・・

 

 「あんだけ正反対の喰い方をされると、あれも有りでのう・・・」

 「撒き餌をかき混ぜて一気に撒いておったのはどこの誰じゃったかい、あの御夫人に は負けておらんじゃったのお」

 「カレーは飲むもんじゃそうな・・じゃが・・やるとなると・・とてもあの様には」

 「今日釣れんやった奴は・・ふふ・・正反対をやったらええんじゃ」

 

 あのふくよか御夫人は、ひょっとすると釣り場に現れた凄腕釣り師だったのかもしれない、下手な釣り師の正反対が持ち技の

   ・・凄腕釣り師だったかも・・・・ 

 

 

 

 

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