備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

野良猫「トラ」と釣り

 

 

  その野良猫を「トラ」と何時とはなしに、呼ぶようになっておりました。

トラは随分と大柄な猫で虎模様、散々つらい目に合ったのでしょうか、人に気を許すと言う事はありませんでした。

 

 

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 子供の頃はトラと、田舎道などで出くわしますと、その凶暴で狡猾な顔相にしり込みしたものです。

 

 トラの腹あたりには大きな、何処でどうして付いたかわからない傷跡がありました。これが一層迫力に繋がってそれは、大の大人でさえ立ち止まらされるのでした。

 

  生き延びる、此れは人間でも大変な事でありまして、トラなど一人で修羅場をくぐってきておりますから、生半可な人間など歯牙にもかけません。何匹か野良猫はおりましたが仕切るのはやはりトラです。いつも群れを率いて先頭です。

 

 子供の頃の釣りを数日前に書きましたが、この頃トラにはよく痛い目に合わされました。釣りというのはおかしいもので、釣った魚をバケツなどに生かします。どの道放流するのですから、すぐ逃がせばよいものをどういうわけか逃がすのは最後です。

 

 魚との駆引きに勝った証左を、なるべく長い時間実感したかったのかもしれませんが、逃がすのは釣りを止める時です。

このバケツがトラの一党にたびたび狙われて、せっかくの獲物を巻き上げられます。

気配を消してこそとも音を立てずに近寄った一党は、トラがバケツをひっくり返します。後は野良猫一党のやりたい放題、媚を売って魚をくれではありません。あくまで強奪です。野盗の群れに襲われた村はこのようなものでありましょう。眺めるしかない事でした。

追い払おうにもトラに睨まれたらすくみます。うなり声をあげられたら、後すざりするしかありません。何しろどう俊敏に動かれるか分かりませんし、その気配を押し出してきます。

 

 釣り師などといいますものは前を見ております。後ろなどがら空きの隙だらけ、そこを狙われます。実に見事な狩りです。

 

 この頃の田舎はまだ栄えておりまして、祭りなどの人出は、それは道いっぱいの人で歩けないほどでした。備後の三大祇園祭り、小童の祇園さんといえばそれは華やかな時代でした。

 田舎の華やかな時代はこの頃までで、私が社会に出てしばらくすると、祭りの大神輿、以前は人が引いていたものが、近くの採石場からブルトーザーを借りてきて引かせておりました。

 

 社会に出てしばらくでしたか、帰省して話などをしております、飼い犬も一緒だったので、その辺の話で「ところであの野良のトラはまだおるんかいのう・・?」

「いつの頃からか、トンと見かけんようになった、他のもどうしたか、野良はおらんよのう」と言う事になった。

 

 

 話は変わってこちらの町内、野良猫の一斉捜索、絶滅作戦だ。

おい、お役人さんや町内のお偉いさん、野良猫の少々など許容、共存して養えるような社会でないと寂れるぞ。

そういやあ町内の祭り、お神輿が軽トラに乗っ取るなあ。