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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

仕事中に釣りのことは考えるが、釣りの最中仕事の事は考えない

 

 

   昔から釣り人といいますものは、現役を退いたご隠居の道楽か、はたまた世捨て人、それにガキの遊びと相場は決まっておったので御座いますが、近頃では現役バリバリのお人が大勢たしなまれます。

むしろ今では現役の方のほうが多く、それは勢い良く釣りをされることです。

 

 

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 確かに昔は年寄りなど多く、半ば人生あきらめる前ですから、色気などとうに飛んで、なりなどそれはひどいものでした。どっちみち釣り場では、なりの事などかまっていられない事態が生じるのですから、それは荒んだ格好の人が多う御座いました。

 

 三代目三遊亭金馬さんという落語家さんがいらっしゃいまして、この方が無類の釣り好き。ある時寄席に「金馬急病に付き、本日休演」の貼り紙が出されましたが、お客からは「しょうがないねえ、金馬は今日も釣りかい」と言われたそうで、その釣り好きは知れ渡っておりました。

 

 どれぐらいお好きかと言うと、本の数冊も書かれていますから、それは相当の入れ込みようです。

 

 今はお亡くなりになったのですが、高座と釣りを天秤にかけて、いけしゃあしゃあとしておいでになる。普通ならひんしゅくものですが、洒落で済まして抱え込む余裕が社会の側に当時はあったのでしょう。 

今では許されることではありませんが、できるなら釣り師といたしましても生業は落語家になりたいものです。そうです秋刀魚は目黒、職業は落語家なのです。

 

 金馬さんの本の中に、大層ひどい人が出てまいりまして・・・

 

「青ギス釣りの乗合船で、ぼろ服を着た汚い爺さんとなじみになり、何の遠慮もなく下司な話までして、あとでその人が永田青嵐だとわかった」

 

 このぼろ服、いや失礼 永田さんは青嵐は俳号、本名は秀次郎、時の東京市長でした。飄々とした風貌で、人を食ったところがあったようですが、関東大震災の際の手際が評価され随分と人気の有った政治家と記されています。

 

 この方何がひどいと言って「東京市長を振ろうとままよ、キスの沖釣りやめらりょか・・」 と言い放ったらしいのです。

たまの日曜日は釣りに行きたい、それがかなわぬなら東京市長を辞めると言っているのである。

ひどい市長も有ったものですが、どうやらこの人の人気は、このような言動を市民が支持したからだといわれています。おおらかな時代であった事です。

 

 仕事の時間と趣味の時間、境目はどの辺りになるのでしょう?

浪士様など仕事中に、それは何匹も釣り上げます。それは頭の中でですがね。もちろん周りには悟られない様にです。

さて境目、判然とはいたしません。存外一体のものであるのかもしれません。

 

 

 釣りの面白いところは、師匠や市長さん、それに名もなき一般市民の我々に至るまで、仕事中に釣りのことは考えますが、釣りの最中に仕事の事は考えません。

 

      ここいらが摂り付かれた人間の有り様です。