備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

わらしべ釣り師 魚は何に変わったか

 釣り師の扱うものは何かといえばやはり魚ということになって、話はここで終わってしまうものだが。

 

 さてその魚、毎度毎度では、釣るにしても食べるにしても、その上お話しするにしても食傷気味に成ってきます。腕のいい浪士様あたりになると、心得たもので、ここいら当たりは世慣れたものである。

 

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              菊石の細工  魚が化けたものだ

 

 

 余分に釣れた魚など、その日釣り場で釣れなかった人に分けてあげたり、ほしい魚と交換したり、まあ色々と落とし処を探ってまいります。世話になった人、隣近所なども落としどころと成ってまいります。

 

 最近の若い人、に限らぬか・・・魚をさばくと言うことをあまりなさいません。いきおい気持ちよく受け取ってもらうと成ると、下処理はして「さあ、煮るなり焼くなり好きにしろい!」の状態で差し上げることになります。これは喜ばれますな、なにしろあとは調理だけですから。

 

 こうやって無事嫁入りした魚はここから仕事をしてまいります。

 

 農家に嫁入った魚はおおむね野菜となって出戻って来ます。季節のものですから、どこでも出来るものは決まってきて、大根ばかりがあちらの家でも、こちらの家からも届けられる始末。これは致し方有りません。野菜ばかりでたまには魚が食いたいなどと馬鹿馬鹿しいことになってまいります。

 

 一番高価であったのは松茸でしたでしょうか・・魚というのは不思議なもので多様なものに化けます。 柿 ぶどう 猪の肉 味噌 密造酒 変わったところでは仏像 石・などというのもあります。

 

 驚いたのは「たけのこ」。

「いつも魚をもらうんで、たけのこを掘って来た」 県の職員を退職した暇人は竹の子を呉れると言う。「好きなだけ降ろしていくわ」軽トラの荷台にあるカバーをはぐるとそこには山盛りの竹の子。馬鹿にも程がある、恨みでもあったのかという掘りようなのだ。

 わけを聞くとはたして恨みであった。なんでも自分は檀家であるのに、寺の仕打ちが醜いと留守を見計らって、堀まくったらしいのだ。

「なあに、猪が荒らしたんよ」げに恐ろしいのは元県職員だが、このごろ街中近くまで猪は出没するので、うまい言い訳を考えたもんだ。

 

 次・・これは困った。 韓国の婆さんがいつも魚をもらうからとダンボールの小さい箱を持ってきた。これはさぞかし・・かの国の珍しい食いもんに違いないと思ったのだが。

箱のふたを開けると、なんと子猫が2匹・・・・・婆さんの飼い猫が産んだ子だそうだ。婆さん一寸待ってくれ!ここは動物愛護センターじゃあないんだ、あんたあっしが気のいいのに付け込んで、こりゃああんまりだ。素朴な顔をして、さも大事なものをあげます。そうはなかなか行くもんか、こちとら人間様が糊口をしのぐのに手一杯だ。今日のところは勘弁してくれ。見逃してくれ、お願いだ!

 

 わらしべ釣り師 あわよくば家の一軒二軒、もくろんでは見るのだが・・・

   いまだ子猫を断っている・・・・