超音波集魚器と釣り師の反省
人生遮るものなどあるものか、何はともあれ蹴散らして、とは思うのですが自然相手の釣り師と申しますと、これは天候の事など有って,思うようにはことは運んでまいりません。
雨風あられ、これに雷でもお膳立てされるとこれはお手上げ,すっかり干上がる陸の河童、世の中でこれほどふがいなく、役に立たないものもありません。
ガキが携帯とゲーム、それに妖怪ウオッチを取り上げられたようなもので、すっかり精彩を欠いてまいります。
こうなりますと道具の手入れでもやろかと言う事になって、あれこれ妄想たくましく都合のいいことを考えながら、にやけてまいります。
このときの釣れること釣れること、理想的な釣りになるんで御座います。
手入れ片付けの最中、出てまいりまして、何がと言うと「超音波集魚器」というもので、海底に沈めますとあら不思議、魚が群れを成してまいります。釣り師は刺し餌の付いた仕掛けを下ろすだけ、魚が次から次と釣れて、それはついに念願の職漁師に成るはず・・だった。
世の中と申しますのはかなりしょっぱいものでして、塩分濃度など濃いもので御座います。そう甘い話など、他人様が散々しゃぶりつくして出汁にするようなものしか残っておりませんで、こちらには充分廻ってまいりません。
そりゃああなた、魚のかけらも寄るものですか。そんな代物を釣具屋で売っておったのですから何をかいわんやなのです。
こちらも姑息な手を使って、楽して他人様の鼻を明かそうと言う事ですから、後ろめたい事この上ないのです。釣具屋に文句も言えません。
まあこれが効能書きどうりなら、今じゃあ海には魚が一匹も泳いではいますまい。
腕のことなどまだ未熟な頃で、それは魚が欲しいばっかりに手に入れたものです。釣りの何たるかが分から無い時期でした。何とかして目端の利いた魚が欲しい、己の努力は間に合いません、手っ取り早く獲物がほしいばかりに浅ましく立ち回った結果です。
同じような事では他にも騙されてまいります。超音波「蚊」撃退装置、これはしこたまかゆい目に合いましたな。何しろてんで効果なし、蚊など自由奔放に飛び回っておった事です。
しげしげと超音波集魚器を眺めておりますと、思い出さずとも良い事を思い出します。あれは中学生の頃でした、雑誌の広告に「なんでも透けて見えるメガネ」と言うのがありまして、色付き始めたガキが数人小遣いを持ち寄ります。
期待が大きかった分、落ち込みはひどいものです。もう決してこのようなものには手を出すまいと。それは固く誓った事です。
で、どうだったのか? と言われますか。
それはご容赦願いたい。こちらの深手、大層な傷であります。それに塩を擦り込んでなおかつ唐辛子をまぶすようなもので御座います。決して全うな紳士淑女の皆さんのなさりようでは御座いません。
それはどちら様も楽して成果が上がる事など、お嫌いな方は御座いません。しかしあらかたは、前向きな努力に比例した分しか神様は配当を呉れません。
ビギナーズラックがあるじゃあないかですって?
いえいえ、あれは悪魔の趣味などに引きずり込もうとする神様の策略ですよ。
すぐに苦悩が待ち受けています。