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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

昔あんたがくれた釣り竿じゃ!

 

 

 

 釣り師と申しますものは、世間様からは少々の変わり者と、格は付けられておるもので御座いますが、その中でも変わった人など数あるものでして、世間様からいぶかしがられてまいります。

 

 

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 釣りは道具など使いませんと成り立ちません。浪士様が釣りを始められてからでも、より操作性の良いものを求めて、客もメーカーも新しいものを生み出してまいります。

メーカーは新素材など開発力がありますから、それは革新的な釣具を作ってまいりますが、いかんせん大勢の一般客相手でありますから、どうしても一般的な客層相手の製品と言うことになります。

これでは少々かゆいところに手が届きませんで、いきおい釣り師といたしましては自作するか、改造を施す事となってきます。

 

 

  釣り師といいますと大概は魚を釣ってまいるものですが、どの世界にも変り種、変種といいますものは存在するものです。

「めげない、懲りない、あきらめない」、人間の鑑で御座いまして立派なものです。釣り師も大概はこうでありますから、立派なものであるかというと、なかなかそうは参りません。

立派なのにも怪しいのやら、理解に苦しむのまで、様々です。

 

 浪士の一人が竿の入った袋を持ってまいります。

 

「おい、これを見てくれ」

 

そういって一振りの竿を取り出します。見ると相当な年代物で、当時は花形であったかもしれないが、今では不備のあるところなど余程改善された新しいものがあるので、だれも見向きもしないような貧相なものです。

 

「おお、出た・・またこりゃあ、安土桃山時代の釣り具か?それにしても古すぎて、何でも引き取る引取り屋が後すざりするじゃろう」と言ってやったのですが当人は涼しい顔の何処吹く風で、この竿に付いて話したげなのだ。

 

 彼は魚も釣りますが、何を隠そう道具の手入れと改造が趣味の釣り師なのです。

御仁の釣具の格納庫には釣具はもちろんありますが、改造に使う工具道具、メンテの品々が大手を振っております。もちろん釣りに費やす時間よりも、こうした改造に費やす時間のほうが多いのは、言うまでもありません。

 

 ひととうり改造の勘所と苦労話を聞かされたのだが、当人のようには面白さが理解できない。竿を見ると元の形を留めるのは竿の形状だけという有様、まったく違う竿に生まれ変わっております。当人様は改造の苦労も相まってか、竿をさすって喜悦の表情なのですから、手出し口出しは無用なのです。

 

 

「ところで貴殿、この竿で何を釣りなさる?」

と聞いた所即座に「カワハギ!」と帰ってきた。

「無謀だ!そのごんぼう竿では・・・・」と言いかけたのだが、やめた。

 

 魚の数・型を追い求めるなら、今ではもっと効率の良い釣り具などいくらでもある。ほとんどの釣り師がそちらに走って釣っているのだが彼は違っております。

釣り師ですから魚がほしく無いわけがありませんが、他の人に比べて魚に対する執着心が薄いのだ。その分改造とメンテに偏ってまいります。

 

 釣り師の執着心エネルギー不変の法則があるなら、魚に向かうか改造に向かうかの違いだけで、別に不思議でもなんでもないかと思ったのですが、到底その道には入り込む興味も勇気も御座いません。

 

 そのごんぼう竿で、効率悪くたまに釣れるカワハギを喜ぶ。釣りにはこのスタイルもある。

 

 浪士 「その竿もう勘弁してやれ。そんな物干し竿、笑い物にしかならんぞ」

 

  改造 「昔あんたがくれた釣り竿じゃ」