気立てのいい自動販売機と釣り師
「気立ての良い自動販売機」と言いますもの、最近は余りお目にかからぬものとなって、街中に潤いと言うものがなくなったことです。
先日、郵便局の口座から他の金融機関の口座に、少しばかりの金額を移さねば成らぬ必要に駆られまして、ATMの前に立つ事です。
端末から振り込み手続きなど出来るのでしょうが、操作の不手際でATMがいうことを聞かず、自分の後ろに他の利用客の列を作って以来、入出金以外の操作は硬くご法度の事といたしております。それ故今回も出金の後、人力運搬、手動現金輸送車になって事を済まそうという手はずで御座います。
さて郵便局のATM 、金を取り出そうとしますと、おや? 1万円札数枚のはずが取り出し口のお金が結構な厚み!
さては、端末の野朗二日酔いで仕事をしやがったな、ここは一番 知らぬ顔の半兵衛を決め込んでありがたく頂戴と行こう!日頃悪い事はちょっとだけしかやっていないので神様の配当に違いないと,ほくそ笑んだまでは良かったのですが・・
端末の野朗嘲り笑うごとく、千円札で払い出しておりました。分厚いはずです。
この手の端末は恐ろしく融通が利きませんで、決められた手順と操作をいたしませんとてこでも動きません。
少々蹴ったり殴ったところで動きませんし,程度次第では「一寸こちらのお部屋まで」と言う具合で非常に具合の悪い事です。
昔々の仕事場付近、それは見るに寂れた自動販売機が有りまして、どなたの持ち物であったかとんと顔を見ぬことでした。
この自動販売機が気立ての良い自動販売機といいますことで、世の中を和ませて参ります。
どう気立ての程がよろしいかと言いますと、やや間の抜けた電子音がいたしまして商品を選べと言います、商品を選ぶボタンを押します、このボタンを押すタイミングを見計らいますとここで驚愕の当選率、2回に一回は当選して参ります。気立てのいい電子音は又の購入を促します。
かなり長い間おかれていて、ややもすると人だかりの出来る、だれにも教えないがかなりの人が知っている、気立ての良い自販機でしたが、誰がいつ撤去したものか忽然と姿を消してしまった。
売れれば売れるほど損でもしたのでしょうか。
一昔前の仕事場付近、かなり新しい自動販売機が有りまして業者が、メンテと詰め替るところで訪れております。
この自動販売機はかなりの気前よさで、世の中に微笑を与えておりました。
どの様な気前よさかと言いますと。これにもルーレットが付いておりまして、光が真上に来た時にボタンを押しますと、これがあら不思議どえらい確立で当たりが出てまいります。
これに摂り付いたのが浪士様含む釣り師の一団、面白半分になぶりものにしてまいります。
あまりに夢中に成ったところで、釣り場に持って行った飲み物はどの釣り師のクーラーを覗いてもあの自販機から供給されたもの、顔を見合わせて苦笑いする事だ。
余りに売れすぎて、すぐさまデザインの変わった自販機が設置されたのだがこちらは手ごわい。
業者に聞くと、最初の自販機は塗装をやり変えてさも新しく見えるよう装ったものだったらしい。
気前がよく気立ての良い自販機以外にも、一寸衝撃を与えますと加減によってはもう一つ出てまいる、かなり下のゆるい自販機も有りましたが、釣り師にはどういうわけか人気が無い。
考えてみるに技術も芸も入らぬ漁など、釣り師にとっては何の面白みも無いことだったからなのかもしれない。あくまで己の技量で当たりをとる、技で当たりをとるこうでなくてはいけません。腕で出したいのだ!
最近の自販機は押しなべて手ごわい、街に安らぎと潤いが無くなって久しいところだ。