備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

釣り師と真っ直ぐな針の釣り

 世の中には理解に苦しむようなことが数ありまして、分かってしまえば、ああなんだと言うことになってまいります。

 出来の悪い頭で考えておりますと、思い悩んで夜も寝られぬという次第になりまして、寝込んでしまうなどと言う、なんとも馬鹿馬鹿しいことになってまいります。

 

 

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            釣り針に関してこの本を読めばぜんぶわかる

 

 

 私などは、やかんをどうして作るのかわからない、注ぎ口はつなぐにしても、上のほうは萎んでおりますから、どの様な細工と治具でなさるのか不思議でならぬことです。

 

 釣りの世界でもサルカン(糸の中間にはさんでよれを防止する道具)というものがありましてこれもどうやって造られるのか理屈が分かってまいりません。何はともあれ、身近なものでも良く見ますと、不眠症になる品々が数あるものでご座います。

 

 

 「浪士様、何です その縫い針の両方が尖ったやつ?」

 

「むふふ・・これは釣り針じゃよ・・むふふ・・・」

 

「ばかなことをおっしゃいますな、真っ直ぐな針で釣れるわけはありませんぜ、ついにお参りが近いんですか?それとも季節の変わり目だからですかい?」

 

「むふふ・・学の無い平民はこれだからまともに相手に出来んわい。大体お前さん方は曲げて捻って返しをつけて、これが釣り針で御座い~とやっとるが、わし位になるとそんな手間隙かかることはせんのじゃ。両端の尖ったこの針で充分なんじゃよ・・ふふふ」

 

「あ~ついに来ちまったなあ・・え~釣具屋で真っ直ぐな針をくれだと誰が言えますかいな、塩撒かれるのが落ちだ、長い間お世話になりました、お達者で」

 

「まあ待て、人生行きがけの駄賃に覚えときな、理屈を教えてやるから最後まで聞けいいな。 これは直針といってな古代からある釣り針なんじゃ。いいかこの直針の真ん中を釣り糸で結ぶ、小学校を出たんだろうそれぐらいは分かるな?」

 

「また馬鹿馬鹿しい落ちで人を担ごうってんじゃあないでしょうねえ」

 

「ほら、針と糸でTの字になったろう、これで針の片方に餌を刺しもう片方に持ってきて刺す。これで釣るんだ。虫餌なら簡単だろう。ふふ・・」

 

「それでどうやって魚を引っ掛けるんですかい?ばかばかしい」

 

「そこが素人の悲しいところだ、いいかこれを水中に流す、見つけた魚が飲み込む、胃袋までだ、そこですかさず合わせを喰らわせる、胃袋やエラに引っかかって釣れて来る寸法よ、どうだ分かったか」

 

「そんな・・・・・」

 

「だ ま れ 古代の古墳からも出土するし学術的にも証明されとるわい、わしらの大先輩であるかの「太公望」先生もこれで釣っておったとの説もある。太公望先生は針の無い釣竿で釣ったとあるが、直針なんでいかにも針が無いと見えたんじゃ、どうだ?まだあるぞ専門書にもちゃんと記述がある、どうじゃどうじゃ」

 

「へえ、しかしどうして古代の人は直針なんか考え出したんですかい?」

 

「ああそれか、それはな魚を食ってる最中に骨がのどに刺さった、それから閃いたそうじゃ。不幸なことを逆に良いほうに利用する、その積極性が釣り針を発展進化させたというわけじゃ、どうだ参ったか!」

 

「しかしなんかうそ臭い話ですねえ、浪士様の話でもありますし」

 

「おい、一寸飲んでみろ!・・試してやる!・・・おいこら待て!」

 

 

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