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備後「あこう浪士」  釣り場の周辺

  釣り場は釣り師の巻き起こす喜怒哀楽に満ち満ちて・・・  さて 事件は釣り場の周辺で起こってまいります!

おとっつあんのような釣り師じゃあ稼ぎが貧しいところだ!

 

 

 このくそ暑いのによくもまあ志を立てられるもんだと、感心いたしてまいります。

志を立てるとなりますと相当な決心決意の入る事で、釣り師に成ろうなどという、かなり単価の安上がりな思い付きとは違いまして、それは余程胆力の要る事で御座います。

このくそ暑いのに深く考えてまいるのですから、それはそれで見上げた努力であるとは思うのですが。

 

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「浪士様、決心しました。親にも相談しましたところ、大層な喜びようで親戚一統打ち揃って支援すると言います」

「其れは何をおいてもまずは目出度いことじゃが、はて?何を決心なされた?」

「はい!政治家に成ろうと思います」

 

 おいおい!一寸待っておくんなさいまし、33歳の若造さん。何を志して決心されても良いところだが、小ざかしい奴の成れの果て、とどのつまりで成る職業だ、若造さんのように「白黒」をそのまま白黒言うようじゃとってもやってはいけますまい。

時には白は赤で黒はピンクだったりするもんで、それをしっかり言いくるめられるような人格でなきゃぁ勤まるもんじゃあありません。そんなやくざな商売目指すんじゃありません。

 

それに第一若造のおとっつあんを見てみなさい、自慢の下手くそ釣り師だ。あっちがよければこっちは穴あき、虻蜂取らずの体たらくというもんだ、恥ずかしながらお前さんはその親父の血を引いた立派な跡取り、一概には言えないがそうそう違うもんじゃあありません。

 

 その親父、大層釣りは好きなのですが、好きなのと上手なのは違うところで御座いまして、足りないのは上手の手と言う具合で御座います。

熱心に釣りをしております。一度良い目をした釣り方に固執しておりますから、これは立派な病状固定、これでは刻々変化する釣場の条件には、とても合わせた釣りなどできません。

 大概の人というのは、欲と世間体で些少なりとも上積みを測るものでして、色々と工夫を重ねて参ります。そうしていろいろな条件に対応する術を、身につけるところですがこのおとっつあん、この上積みには目もくれずひたすら十年一日、何が哀しくて同じ殻に閉じこもる。

 

 このくそ暑いのに志を立てるのは良しとしよう。しょうがない、浪士様がめったやたら教えるところじゃあないが、ここは一つ取って置きを教えて進ぜよう。

 

 以前にもこの手合が現れて、そりゃあ教え込んだところだ。

「あんた政治家と言やあ資格も学歴も入らぬところだ。宣言したトタンに成れる職業で他にもあるが、これで職が無いなど如何して言えよう。宣言したもん勝ち、ほら職が手に入った、あとは成り立つよう整えるだけだ」

「デザイナーに大工、何でもなれますちんころりんだ。何! 世間が相手をしてくれない?足らず目は技術なり知識なり付け加えるだけのところだ、何も難しい事じゃあありません」

「さあ、目出度く政治家の誕生だ。ただ当選していない政治家というだけの事で政治家には違わぬところだ。これでオバマだろうが習近平だろうが同等の政治家だ。ここは一つ(当選していない政治家)だが挨拶に行って来い」

「そんなことは・・・・」

「ところで家族以外の支援者は・・?」

「友達が6人支援するそうです、こないだ川原でバーベキューをしてきました」

「はあ!そんな撒き餌で、年端の行かぬ若造が寄ってたかったところで何場の足しになろうかいな。いいか撒き餌は一つ一つ意味が有るもんだ、やたら撒けばいいってえもんじゃあねえぞ。ねんごろに丁重に事は運ぶんだ」

「ここは浪士様が撒き餌の冴え渡る技を見せてやろう、早速家に帰って田地田畑を叩き売って金に換えな。浪士様が舐めるように撒いてやる」

 

 不景気で田畑の処分がまま成らぬのか、警戒したのかは分からぬが・・・随分と時の経ったことだ。