あこう浪士は赤穂浪士と違います!
お前さんなんで 「備後あこう浪士」なんだい?へえ何度も言い続けたんですがね、繰り返すのもなんですからもう一度お耳を汚させていただきます。
私の住処が備後の国、で備後は納まります。次の あこう なんですが、これは魚の名前で御座いまして別名(キジハタ)と申しまして、ハタの仲間で御座います。一時は大変数が少なくなりまして、幻の高級魚と呼ばれたもので御座います。無いものねだり、無いとなれば手に入れたい、手に入れば賞賛されると言う代物で御座いまして、備後の次のあこうが収まってまいります。あとは赤穂浪士にかこつけて、目出度く 備後あこう浪士となる次第で御座います。
あこうという魚 夫婦で住んでいると巷間言われますが、この魚 雌雄同体と申しまして、最初小さい頃オスで、大きくなるとメスに変わってまいります。そのままの人もおいでです。
このような魚は他にもありまして、チヌなどもその類です。
この魚は夜行性でして私どもは真昼間眠っておるところをたたき起こして足元までおいで願います。それを釣るということになってまいりまして、寝ぼけ眼の魚を釣るなどと、あまり行儀の良いことではありません。
なかなか、食ってくれぬことが多くて、1ヶ月も2ヶ月も竿先がピクリとも しない事などざらですから、それはほとんど修行に近いこととなって参ります。
なぜ あこう かと申しますと、他の魚と格がちがいますからチヌの100匹と比べるのさえ憚られます。 他の人がいくら他の魚を釣ろうが、まったく意に介しません。 一匹釣れば肩で風を切ることが出来るのですから、これはもう麻薬です。
思うようにならぬは世の常、どうにもなら無い場合は、次の一手 神頼みがあるので安心できることです。
この近所にあります神社、浪士様の目に止まったのが運の付き、浪士様の千社札など貼られています。逃がすものですか。わずかばかりの賽銭に目が眩んだばっかりにやれ魚が釣れるようにしろだの、宝くじの当たりは順番をすっ飛ばして、次あたりに当選させろなど仕事をいっぱいさせてやります。
ちゃんと仕事をしない場合、競争入札に掛けるか、焼き討ちにすると、小さな声でささやいておきましたから、仕事はするはずです。頼んだぞ!