竿師に成った釣り師の 「玉網」 その3
お前さん、又豪勢に作ったところでどうなさる、釣具がこんだけ有ると死ぬまで使い切れん、あの世の宛がい扶持かい、と言われる所ですが勢いに任せて作り上げたのですから、あて等有る訳はありません。
自分の使用するものはさておいて、さてどうするかと思うことに成って参りますと、
さてどうしましょう。
売る気かい とも言われるのですが、それとて無調法で手段も無いところ、とても器用には立ち回れません。
余生分でお釣りがくるのですから、やりすぎは何事も褒められません。
さてどうしましょう。
今回は釣り上げた魚をすくう道具「玉網」 タモといいます。
伸びるタイプのものも有るのですが、筏の場合釣り座から水面が近い為1.5Mばかりの長さの物です。
柄は布袋竹やら篠岳を使用しています。これもあぶら抜きの処理をした後、乾かしたものを矯めます。(ためる)とは矯木を使って火であぶった竹の曲がりを修正します。この事を矯めるといいます。
竹など自然の中で好き勝手に育つものですから、一本一本素性が違ってきます。
苛酷な環境の物は強靭ですし、なまくらな物は温室のような育ちをしているものです。
さる釣り仲間が一本くれと言いますので、好きな竹を選べと申しましたら、虫食い穴の無いものを選びました。
素人の浅はかさとでも言いますか、当座見た目の良いものを選んだのですが、好事家の間では虫食いのある竹をわざわざ選んで使います。
傷を乗り越えて育った竹は強靭だからです。
傷など修正する技法は有るのですから先々の事を考えれば強いのに越した事はありません。
網の部分はいかにもできませんので購入したものですが、円形の枠は籐の(ラタン)10ミリを熱で曲げて作って有ります。籐細工が盛んなころは市内でも手に入った素材ですが取り寄せて使用しました。
全体は漆塗りをほどこしてあります。下地の処置に全体的にペーパーを掛け、竹や籐の表面にあるホーロー質を除去して有ります。この処置がないと漆がうまく乗りませんし、すぐ剥がれる原因に成ります。
つなぎボルトはステンレスでナットの部分は同じくステンレスナットを整形して柄にはめ込んで有ります。
ボルトの規格は3分(インチネジ)、他には4分と2分半が釣具には使われます。
釣具屋さんはこれを(大・中・小)の呼び名で使い分けているのも、業界が違えばそれぞれの事で面白い事です。
さて最後の釣具は「エビすくいタモ」です。